『社会科学研究』第58巻第1号

「アジア」を語るということ―1980年代以降の竹内好論―
Narrating Asia : Reading Yoshimi Takeuchi in Post-War Japan
佐藤美奈子/SATO Minako

Keywords: 竹内好, 戦後日本, アジア論, ナショナリズム論, 思想史,

抄録

 本論文は, 1980年から現在に到るまで日本国内で発表された竹内好論を概観し, そこに見られる議論から同時代日本の問題意識を探ろうとするものである.戦後, 「アジア」「日本」「民族」などを積極的に論じた竹内好は, その死後も多くの論者によって取り上げられ続けてきた.本論では, これらの竹内論を年代順に取り上げて分析し, その論調がどのように変遷してきたかを明らかにする.具体的には, 戦中・戦後日本が主要な問題関心にあった80年代から, ナショナリズム論と中国の変容に直面する90年代, そして世代交代の中で新たに政治性が発見・喪失される2000年以降の竹内論を比較しながら, 戦後日本において「アジア」という問題がいかに語られるか, それと関連して「日本」「ヨーロッパ」がどのように位置づけられるか, その中で「政治」や「個人」がどのようにあるべきかといった問題がいかに論じられたかを明らかにする.

abstract

This paper aims to reveal how the idea of Yoshimi Takeuchi is understood in post-war Japan. Yoshimi Takeuchi, a renowned Japanese scholar whose main interest is in modern Chinese literature, is also active at the outside of academia in questioning various issues concerning not only Asia but also politics, individual, society and so on. In this paper, I analyze some arguments on his thought which has been published since 1980 after his death, and show how the concepts like Asia, Europe, Japan and nation are re-examined. It is also discussed that the memory of war in 80's, nationalism in 90's, and the renewed concept of the political after 2000 become influential in each decade, which reflect the interest of Japanese society.

社會科學研究 第58巻 第1号(2006-09-30発行)

(更新日: 2012年 11月 2日)

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