『社会科学研究』第60巻第2号

アメリカ企業年金政策の変質―2006年年金保護法の分析から―
Historical Change in the Private Pension Policy in the U.S. : Analysis of the Pension Protection Act of 2006
吉田健三/YOSHIDA Kenzo

Keywords: アメリカ, 福祉国家システム, 企業年金, 年金保護法, 年金政策,

抄録

 アメリカでは, 企業年金の主要な形態は, 確定給付型年金から401(k)プランを中心とした確定拠出型年金へと移り変わってきた. この変化の重要な帰結の一つが, 退職後所得保障の責任やリスクの雇用主から従業員個人への転嫁であることは広く知られている. 実際に, アメリカでは, 伝統的な確定給付型年金の縮小と401(k)の普及に伴う個々人の退職後所得水準の多様化, すなわちリスクの拡大が注目され, その対処に必要な政策が議論されてきた. 本稿は, 企業年金の変化がもたらした帰結が, 新たな政策課題の出現だけではなく, 政策が議論される枠組み自体の変化にもあったことを強調する. 確定拠出型年金の普及に伴い企業年金政策の傾向は, 規制の強化から緩和へと変化しつつある. その変化は, 一方では単にアメリカにおける政治的変動の帰結であるが, 他方では政策対象の性質自体によっても規定されている. 2006年年金保護法は, この関係が集約される重要な法律であった. 同法では, ニューエコノミーの終焉という契機, また企業年金システムの強化という共通の目的のもと, 確定給付型年金への規制強化と確定拠出型年金への規制緩和が同時に行われている. 本稿は, 両年金の改革の内容や, そこに至る経緯, 政策過程の分析を通じて, 政策対象の性質の相違と年金政策の内容との関連を考察する.

abstract

The private pension system in the U.S. has undergone changes over the years. Participants of defined contribution plans, for example, 401(k) plans, have increased, while those of traditional defined benefit plans have decreased. One of most apparent results of the change was the shift of risks of asset management from employers to employees. Policy makers have discussed several ideas to cope with the problem. This paper states that the change in private pension system not only created new problems to be managed by policies but also altered the structure for deciding policies to manage the problems, which is from regulation to deregulation. The Pension Protection Act of 2006 was a typical case, which shows that the policies can be changed with nature of subjects under same purposes and backgrounds.

社會科學研究 第60巻 第2号(2009-02-03発行)

(更新日: 2012年 11月 2日)

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