東京大学社会科学研究所

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研究

『社会科学研究』第61巻第5・6合併号

ローカル・アイデンティティの複合性 : 概念の使用法に関する検討
The Complexity of Local Identity : an examination of the direction for uses of the concept
大堀研/OHORI Ken

Keywords: ローカル・アイデンティティ, 本質主義, 自己認識, 複合性,

抄録

 地域再生の文脈で使用される「ローカル・アイデンティティ」という用語は, これまで複数の意味・水準で使われてきた. 明確な概念規定抜きで使用すると, 現場に混乱をもたらしかねない. これまでの使用例は, 個人レベル(個人の地域に対する帰属意識)と, 集合レベル(地域関係者の多くに共有されている地域内の要素), の二通りに大別できる. 現場では, 語義を明示して使用する必要があり, コミュニケーション・コストは高い. だが「アイデンティティ」という語は「自己認識」の意識を喚起する利点がある. ただし正負の両側面の複合的な自己認識が求められる. また「アイデンティティ」の語が誘発する本質化の危険性を避けるために, 「ローカル・アイデンティティ」を, 変化し得るものと把握することが必要である. 一方で「アイデンティティ」と言う以上, 保持すべき要素の弁別も欠かせない. ここでも複合的な認識が求められる. 地域の複合性を捉えるツールとすることに, 「ローカル・アイデンティティ」の語を用いる意義を見出すことができる.

abstract

The term "local identity" is used to mean a number of different things. Its meanings can be classified into two broad categories: the individual level (an individual's sense of belonging to a community) and the collective level (elements within a community that are shared by many people within it). At the community level, there is a need to clarify this definition, and it is a complicated process. Here, the word "identity" is advantageous in that it triggers an awareness of the "recognition of the self." However, both positive and negative aspects should be recognized in a composite way. Also, in order to avoid the risk of falling into essentialism, "local identity" should be understood as changeable, and should be understood in a complex way, along with the elements that ought to be preserved.

社會科學研究 第61巻 第5・6合併号(2011-03-24発行)

(更新日: 2012年 11月 2日)

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