『社会科学研究』第62巻第5・6合併号

市場経済化を媒介する中国法の反形式的傾向
市场经济体制下的中国法的反形式倾向
小口彦太

Keywords: 憲法規範, 企業国有資産法, 市場経済化, 民法の反形式的傾向, ポストモダンの法,

抄録

 憲法規範の変遷過程を通して見る限り, 中国の市場経済化は, 1990年代初頭に本格化し, 2004年の憲法修正における私有財産一般の保護規定化と人権概念の採用によってほぼ完成する. 私有財産権と公有財産権の平等をうたった2007年の物権法制定は, 社会主義経済体制維持派の敗北を決定づけた. そして, 公有財産といえども, もはや社会主義化の"管制高地"ではありえず, 徹底した国家資本主義化を目指すものであった. こうした, 中国経済の市場経済化, 資本主義化にとって, その経済を直接媒介する民法の役割は決定的に重要である. 中国は1999年に統一契約法, 2007年に物権法, 2009年に権利侵害責任法(不法行為法)を制定し, この課題に対応してきた. しかし, これらの法の中に, 資本主義の計算可能性を保障するものとしての論理主義的法律学と矛盾する法的思考様式及び実定的規定が見出される. ポストモダンの法は法の論理を否定し, 利益考量へと傾斜していくと指摘されているが, 中国法はそうした傾向に符合するように思われるし, 他方, 帝政中国時代以来の反形式主義的思考に符合するともいえる.

abstract

仅以宪法的变迁过程来看的话, 中国的市场经济化是从20世纪90年代初正式开始的, 通过2004年的宪法修改, 即规定了保护私有财产和采纳了人权概念而基本得以完成. 规定平等保护私有财产权和公有财产权的2007物权法的制定, 决定了主张维持社会主义经济体制派的败北. 即便是公有财产, 也巳经不能成为社会主义化的"制高点"了. 中国在追求彻底的国家资本主义化. 对中国经济的市场经济化, 资本主义化来说, 作为直接作用于经济的民法, 其重要性不言而喻. 中国通过制定1999年的合同法, 2007年的物权法, 2009年的侵权责任法, 解决了许多民法上的问题. 但是, 在这些法律当中, 存在一些与作为保障资本主义的可计算性的论理主义法学相矛盾的思维方式和实体规定. 有学者指出, 后现代的法否定法的论理, 倾向于利益衡量. 中国法好象符合这一倾向, 同时也可以说符合从中国帝制时代以来的反形式主义的思维方式.

社會科學研究 第62巻 第5・6合併号(2011-03-24発行)

(更新日: 2012年 11月 2日)

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