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全所的プロジェクト研究成果
『希望学』シリーズ

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「希望学」シリーズの刊行にあたって

希望学は、希望と社会との関係を切り開く、新しい挑戦である

  希望の意味、そして希望が社会に育まれる条件などを考察する希望学は、経済学、社会学、政治学、法学、歴史学、哲学、人類学などを総合した独自の研究である。思想研究にとどまらず希望学は、岩手県釜石市を対象に、他に類のない総合的な調査を実施するなど、地域密着の研究も行ってきた。

 

  失われた10年から世界同時不況に見舞われた現在(2009年)に至るまで、「希望は失われた」という言説は、社会に蔓延している。その理由は何だろう?

  収入や仕事などの経済要因に加え、年齢や健康なども希望には影響を及ぼす。景気停滞、人口減少、メンタル・医療問題などは、希望喪失の背景をなす。希望には、対人関係も深くかかわる。コミュニティや家族の変容、個人の社会的孤立といった問題も、希望の喪失を招いてきた。希望学は経済的・社会的要因と希望の相互作用を丹念に解きほぐす。

  希望は、未来を展望するための行動指針と同時に、挫折を含む過去を想起し、現実を受けとめるための想像力の源泉でもある。ときに効率性の尺度すらスルリと乗り超える希望は、幸福の追求や行動を喚起するための「物語」である。

 

  哲学者ブロッホが語る「まだない存在」としての希望が象徴するように、希望はいつもどこかパラドキシカルだ。希望は「まだない」からこそ。求めるべき対象として、希望は「存在」する。希望は、画一的な理解を拒絶する「怪物」である。個人の次元で語るのと、社会の次元で語るのでは、希望の意味はおのずと異なる。その違いを理解することなく、政治が安易に希望を語るのには危険性すら孕んでいる。希望に対する理解の共有が、今こそ求められている。

 

  心の問題であると同時に社会的な次元を持つ希望。「まだない」ものでありながら、現在の人々の行動を支える希望。そんな希望の両義性を、希望学は多様な角度から探っていく。

  さらに希望学の釜石調査は、地域の希望を模索するとき、ローカル・アイデンティティを基盤に対話とネットワークの形成が鍵を握ることなどを具体的に明らかにする。

 

  「希望学」(全4巻)は、希望学の研究成果から特に重要な内容を厳選、書き下ろしを多数加えて構成される。読者が、希望を通じて社会科学全般へ関心が高まるよう工夫もしている。そこから社会や地域の新たな考察に不可欠な「希望」の姿が明らかに示される。


 「希望学」を知らずして、今後、希望は語れない。


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