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研究

社研セミナー

米軍統治下沖縄における性産業と女性たち——1960〜70年代コザ市——
小野沢あかね(立教大学/社会科学研究所私学研究員)

日時:2013年 9月10日 14時50分-16時30分
場所:センター会議室(赤門総合研究棟5F)

報告要旨

 本報告の課題は、嘉手納基地に隣接した「基地の街」として名高いコザ市の、1960-70年代初頭にかけての時期における商工業の就業構成をジェンダーの視点から分析するとともに、性産業の形態とその変化、そこでの女性労働を検証することである。1960年代の沖縄では、米軍基地関連収入が増大したが、1956年に誕生したコザ市の場合、その傾向は一層大きかった。このうち、商工業の従業員総数を見てみると、女性の方が圧倒的に多かった。しかも従業員数第一位は米軍統治時代を通じて一貫して「バー・キャバレー・ナイトクラブ」であり、この数字は従業員数第二位以下を大きく引き離す突出した数字だった。そして、従業員数第二位以下の商工業の担い手も女性が圧倒的に多く、それらも性産業や米兵と密接な関係を持つものだった。戦後沖縄の基地依存経済については、第三次産業偏重の不安定な構造であることが指摘されてきたが、商工業における就業構成をジェンダーの視点から分析し、最も就業人口の多かった性産業の形態とその変化、そこでの女性労働を分析の中心に据えた研究はない。一方、戦後沖縄の性産業については米軍の性病政策やAサイン制度について米軍資料を使用した研究がある。また、貧困のために性産業に就業せざるをえなかった女性たちが、米兵による暴力や殺害の危険にさらされて心身を病むことの多かったことを指摘する研究があり、大きな反響を呼んでいる。本稿は、こうした米軍の政策と米兵の暴力を重視しつつも、米軍支配下の多くの女性たちが性産業以外に生存の手段を見いだせなかったことを考えると、彼女たちがそこでどのような労働・暮らしをしていたのかをより包括的に検証し、基地依存経済のなかに性産業を位置付ける必要があると考える。そのためにまず本報告では、彼女たちの労働と暮らしの場であり、その生を規定したコザ市の都市としての在り方を、性産業の存在形態を中心に、その他の商工業との関係も視野に据えて検証する。そしてその上で、性産業における女性労働の変遷を明らかにしたい。


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