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研究

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明治日本の外国人統治の試み:条約改正史から条約運用史へ
五百旗頭薫(法学政治学研究科)

日時:2014年11月11日 14時50分-16時30分
場所:センター会議室(赤門総合研究棟5F)

報告要旨

 王政復古から日清戦争期までの日本外交にとって、最も重要かつ継続的な案件は、いわゆる不平等条約の改正であった。条約改正史は通説的には、法権回復(領事裁判制度の撤廃)に向けた長期間の努力とのその成功としてとらえられてきた。これに対して報告者は、行政権回復(領事裁判制度を認めつつその下で行政規則を制定して外国人に適用する権利を確保する)に向けた長期間の努力とその挫折、法権回復への跳躍、跳躍がもたらす混乱、としてこれを解釈することを提唱した(『条約改正史』有斐閣、2010年)。

 その前提にあった見解とは、当時の外交の相当部分が、個別の行政規則をめぐる日本と条約国の折衝という意味での条約運用交渉である、というものである。条約改正交渉は、その氷山の一角であった。

 しかし、この条約運用が具体的にどういうもので、どう変遷し、条約改正をどのように規定したか、については明らかにしていなかった。条約運用史、あるいは条約運用史と条約改正史の関係こそ、特定の国・時代の条約をめぐる外交交渉にとどまらず、政治的・社会的ストレスを伴う条約がどのような受容・抵抗・改正要求をもたらすかをより広い視野で理解するための糸口となるはずである。本報告ではこの条約運用史を試論的に提示したい。


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