所長コラム
所長コラム 2024/11/8
海と希望の学園祭in Kamaishi
早くも11月になりました。今月の9日・10日に、岩手県の釜石で「海と希望の学園祭in Kamaishi」が開催されます。東京大学大気海洋研究所、生産技術研究所、先端科学技術研究センターとともに、社会科学研究所もこのイベントに参加します。社研からは関係教員がトークイベント等に参加するほか、事務職員のみなさんも司会や受付としてイベントの運営に加わります。またイベント会場内に社研紹介のブースを設置し、パネル展示や映像上映も行う予定です。
なぜ社研は釜石と関わりを持つようになったのでしょうか。社研では2005年から全所的プロジェクト研究として「希望学」を開始しましたが、その翌年1月には同プロジェクトに参加する玄田有史、中村尚史と私が早速釜石市を訪問しました。「地域の希望を考えるなら釜石を訪問すべきだ」、そんなアドバイスをいただいての行動でしたが、釜石の皆様は私たちを暖かく迎えてくださいました。社研の釜石調査の成果は『希望の再生:釜石の歴史と産業が語るもの』、『希望をつなぐ:釜石からみた地域社会の未来』(ともに東京大学出版会、2009年)にまとめられています。
それ以降も、2011年の東日本大震災をへて社研と釜石の結びつきはさらに深まり、釜石の関係者の皆さんの聞き取り調査をもとに、『<持ち場>の希望学:釜石と震災、もう一つの記憶』が刊行されました(東京大学出版会、2014年)。また2016年に始まった「危機対応学」でも釜石調査が再開され、『地域の危機・釜石の対応』(東京大学出版会、2020年)に結実しています。
その間、釜石市に隣接する大槌町にセンターがある大気海洋研究所との交流が深まり、さらに生産技術研究所、先端科学技術研究センターとも共同で行なっているのが、「海と希望の学園祭in Kamaishi」です。社研と釜石のご縁はこれからも続きます。
今回のイベント用に「釜石から社研が学んだこと」をプリントしたステッカーとクリアファイルを作成しました。そこに書かれている言葉の一つは「希望はある。でも、もっとあるはずだ」です。「もっとあるはず」の希望をこれからも考えていきたいと思います。
宇野重規