所長コラム
所長コラム 2024/12/16
アートと社会科学
今年度に入って新たに始めた企画に社研アートDayプロジェクトがあります。これは社研の教職員が美術館を訪問し、絵画を鑑賞するばかりでなく、企画のねらいや運営の工夫を伺い、研究所としてのクリエイティブ力を強化することを目的としています。
第1回は東京国立近代美術館(竹橋)、第2回はサントリー美術館(六本木)を訪問しました。近代美術館では「TRIO パリ・東京・大阪モダンアートコレクション」、サントリー美術館では「儒教のかたち 心の鑑」がテーマであり、それぞれ企画を担当された学芸員の方から説明を伺った後で、展示作品を鑑賞しました。両美術館の皆様に心より御礼申し上げる次第です。
日頃、社研の各部署に勤務される皆さんにとっても、ともに絵画を楽しみ、語り合う良い機会になったのではないかと思います。絵を見る様子、語り合う様子からは、普段とは違う一面も垣間見えて、楽しいひと時になりました。
先日の第2回の社研アートDayプロジェクトのテーマは、やや意外なことに「儒教」でした。儒教とアートに何の関係があるのかと思いがちですが、意外や意外、日本の生活文化のいろいろなところに儒教の影響が浸透していることを学びました。
私にとって面白かったのは、各種「親孝行」イメージでした。母親に食べさせようと冬山に筍を探しに行った孟宗の話、年老いた両親を楽しませようとおどけて見せた老萊子の話が印象的でした。以来、筍といえば親孝行のイコンとなり、江戸時代にパロディを含め、各種デザインが考案されたことを面白いと思いますし、自身高齢なのに両親を喜ばせようと奮闘する老萊子も微笑ましく感じました(喜ぶ両親の表情が素敵でした)。
これからも社研アートDayプロジェクトを続けていくつもりです。アートと社会科学は、意外に相性がいいかもしれません。
宇野重規