東京大学社会科学研究所

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研究

『社会科学研究』第57巻第5・6合併号

予備的貯蓄とケインズ型消費関数
Precautionary Saving and the Keynesian Consumption Function
宇南山卓/UNAYAMA Takashi

Keywords: ケインズ型消費関数, 予備的貯蓄, バッファーストックセービング, 不確実性, 恒常所得・ライフサイクル仮説,

抄録

 本稿の目的は,動学的最適化問題に基づいた消費の決定理論とケインズ型消費関数の関係を明らかにすることである.特に,不確実性の消費に対する影響を明示的に分析したバッファーストックセービングモデルにより,ケインズ型消費関数の再解釈する.ケインズ型消費関数はその静学的な側面を,恒常所得・ライフサイクル仮説として定式化された動学的消費決定モデルによって批判されてきた.しかし,不確実性を導入した恒常所得・ライフサイクル仮説であるバッファーストックセービングモデルによって,ある時点での所得には「不確実性がない」という将来の所得にはない固有の性質があることが示された.これは,所得と消費には,恒常所得・ライフサイクル仮説の指摘する生涯所得を通じた関係に加え,不確実性の減少を通じた時点内の関係が存在することを意味する.すなわち,この関係により,ケインズ型消費関数的な関係が存在することが明らかにされたのである.

abstract

This paper focuses on the relationship between the precautionary saving literature and the Keynesian consumption function. In particular, it has been discussed that the buffer stock saving model can provide a micro foundation to the Keynesian consumption function. The buffer stock saving model shows that consumption in a time period is correlated with income within the period because realizing income today reduces life-time total income risks. Unlike the usual lifecycle/permanent income hypothesis, which insists that income affects consumption only through the life-time income effect, this implies that consumption depends on within-period income, and therefore, the Keynesian consumption function can be consistent with the dynamic optimizing model.

社會科學研究 第57巻 第5・6合併号(2007-03-28発行)

(更新日: 2012年 11月 2日)

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