東京大学社会科学研究所

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研究

『社会科学研究』第58巻第1号

浮遊する歴史―1990年代の天皇論―
Visions of Monarchy in 1990s Japan
苅部直/KARUBE Tadashi

Keywords: 1990年代, 日本, 政治思想, ナショナリズム, 皇室制度,

抄録

 天皇論という視角から見た場合, 日本社会の1990年代は, その前代との変化が大きいのに比べて, そのあと, 2000年以降との違いはあまりなく, 90年代における特徴が, いまも持続していると言ってよい.言論界においては, かたやナショナリズムの復活を声高に唱える声, そして他方ではそうした動向を警戒する議論が盛んで, 天皇論も対立点の一つとなっている.だが論壇での議論の熱さに比べ, 社会一般の皇室に対する感情は, むしろ希薄なものと言ってよく, そのことがかえって.ナショナリズムと政治意識との関係に, ある不安定性をもたらしているのである.

abstract

The Japanese monarchy (Emperorsystem) was much discussed in 1990s, but there was a sharp contrast between intellectual argument and popular opinion. Scholars and journalists eagerly debated on the subject of nationalism and monarchy, whereas the general public was mostly indifferent to the Imperial Family. This article observes that the ambiguity about the Japanese vision of monarchy may cause the outbreak of some political action, e. g. terrorism, and this propensity still lies in this society even now.

社會科學研究 第58巻 第1号(2006-09-30発行)

(更新日: 2012年 11月 2日)

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