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『社会科学研究』第58巻第1号
隠れたる市民社会―引き延ばされた社会契約の結び直し―
The civil society hidden in 1990'S Japan
都築勉/TSUZUKI Tsutomu
Keywords: 冷戦の終焉, 湾岸戦争, 政治改革, 市民社会, 社会契約,
抄録
冷戦の終焉と湾岸戦争は日本の安全保障の考え方に転換を迫った.日本国憲法が掲げる平和主義は日本の海外での武力行使を禁じているし, 冷戦下であればアメリカはソ連や中国に対抗するために自動的に日米安保体制の継続を図った.しかし今や日本に何ができるかが問われるようになった.それは日本の市民社会が, 自分たちが作る政府に何をさせるかを改めて付託する社会契約の結び直しのチャンスを意味した.ときあたかも昭和天皇の死去やバブル経済の崩壊により先行きが不透明になる中で, 新しい市民社会の思想を創造する試みにはさまざまな困難が伴った.湾岸戦争を経て, 論壇では平和基本法ないしは安全保障基本法を制定する提言がなされたが, 世論はそれらを必ずしも十分には受けとめなかった.政治の争点はむしろ内向きの政治改革として設定された.そして日米安保条約の再定義が実現したとき, 日米関係は再び非対称な形で固定されることになった.
abstract
The end of the Cold War in 1989 and occurring of the Gulf War of 1991 forced Japan to change its security policy. Although the Japanese constitution inhibits the Self-Defense Force from acting abroad, the Japanese people or the Japanese civil society had to invent the way how they take part in the resolution of regional conflicts such as the invasion of Kuwait by Iraq. That was the time when the Japanese people should re-conclude the social contract as to trust whatever to their government, but they were reluctant to do such a thing. After all the re-definition of US-Japan Security Treaty by Clinton administration fixed again asymmetrical relations between US and Japan enduring from the end of World War II.
社會科學研究 第58巻 第1号(2006-09-30発行)
(更新日: 2012年 11月 2日)