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- 「二大政党制の実現を阻害する地方レベルの選挙制度」
『社会科学研究』第58巻第5・6合併号
二大政党制の実現を阻害する地方レベルの選挙制度
The Impact of Subnational Electoral Systems on Duvergerian Competition : The Case of Japan
堀内勇作, 名取良太/HORIUCHI Yusaku, NATORI Ryota
Keywords: 選挙制度改革, 並立制, 都道府県議会議員選挙, M+1の法則, 空間競争モデル,
抄録
1994年に衆議院議員選挙(以下,衆院選)制度改革が実施された当時,小選挙区制の導入によって二大政党制(少なくとも選挙区レベルでは2人の有力候補者が議席を争う状況)の実現が,将来的に期待された.しかし4回の選挙を経験した現在においても,小選挙区における有効候補者数は必ずしも2へと収束していない.先行研究においては,その要因を解明する上で,新しく導入された選挙制度が比例代表制を並立させた制度であることの戦略的帰結に焦点を当ててきた.これに対して本論文では,地方レベルにおける選挙制度の効果に焦点を当てる.都道府県議会議員選挙(以下,県議選)では,定数1~18の単記非移譲型選挙制度が採用されている.このため,地域によっては衆院選の選挙区と県議選の選挙区の定数の間に不均一が生じることになる.衆議院議員と都道府県議会議員の戦略的相互関係を仮定する限り,この不均一は,衆院選の小選挙区における政党間(候補者間)競争に影響を及ぼすであろう.具体的には,県議選の選挙区定数が多いほど県議選の有効候補者数が多くなり,その結果,衆院選の有効候補者数も増加すると考えられる.本論文では,同仮説を演繹的に導出した上で,衆院選の選挙区別集計データを用いて同仮説の妥当性を検証する.
abstract
In this paper, using district-level data from Japan, we show that the larger the effective number of subnational-level candidates in a multi-member district (MMD) under the single non-transferable vote (SNTV) system, the larger the effective number of national-level candidates in a single-member district (SMD). This finding suggests that the SMD system's alleged district-level effect on producing two-candidate competition is weaker if subnational-level politicians, who have strategic interactions with national-level politicians, are elected under a more proportional electoral system. Our findings suggest that the degree of subnational-level partisan fragmentation determines the degree of bipartism in a national legislature.
社會科學研究 第58巻 第5・6合併号(2007-03-28発行)
(更新日: 2012年 11月 2日)