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研究

『社会科学研究』第61巻第3・4合併号

都市空間形成の理論的検討 : 経済学から都市法論を見る
A Theoretical Consideration on the Formation of Urban Space
山田良治/YAMADA Yoshiharu

Keywords: land law, urban law, land economics, social common use-value, public benefit,

抄録

 戦後の日本社会において, 「土地問題」がこれを含む「都市問題」として展開するにつれて, この種の問題を扱う法学領域もまた「土地法」から「都市法」へとその方法的軸足を移してきたとされる. 換言すれば, 「近代土地法から現代都市法への移行」である. 都市空間形成をめぐる社会的変化は, 当然のことながら経済学においてもその新たな展開を促すものであった. 本稿の課題は, 経済学分野における戦後都市空間論の展開を念頭に, 経済学の立場からこうした法学領域で扱われている都市論の変化・発展の意味を捉え返し, そのことを通じて都市空間形成に関わる両者の学際的研究の発展に資することにある. その際, 第一に, 見上崇洋の整理に従えば, この都市法論の展開にも三つの類型があるが, ここでは原田純孝を代表的論客とする「現代都市法論」(見上のいう「第三類型」)を対象としてとりあげる. 経済学を専門とする筆者が法学内部で緻密に展開されるこれらの諸議論に深入りすることは困難であるし, 本稿の課題からしてその差し迫った必要性もなかろう. 第二に, ここでいう経済学とは, 古典派経済学に端を発し, マルクスによって体系化された「政治経済学」(もしくは「社会経済学」)を指す. 土地・空間を財一般と本質的に区別しない「近代経済学」と異なり, ここではいわゆる「地代論」さらには「土地所有論」として, 土地・空間が独自かつ固有の理論領域をなしてきた. この領域がしばしば「土地経済学」とも呼ばれてきたことからすれば, 経済学でも流れとしては「土地経済学」から「都市経済学」へという道筋を確認することができる. 後者の内容を検討するに際しては, 原田の議論との対比という観点から, 同じく経済学による都市論の代表的論客である宮本憲一の議論を取り上げる. 以上要するに, 経済学における「土地経済学」→「都市経済学」という流れと, 法学における「土地法」→「都市法」という流れを, それらの内的な関連性において統一的に把握することを目指す. 予め指摘すれば, その際, 上記の論稿で共通して重視されている都市空間の「共同」性あるいは「公共性」という概念を, 両者の結節概念として位置づける. さらに言えば, この「共同」性・「公共性」を, 都市空間においてア・プリオリに前提とされるものではなく, 歴史的に変化発展する性格のものであると捉えることにより, 課題に即した検討を加えようとするものである.

abstract

Since the land problem in the postwar period have been evolved as a part of the urban problem, the study of law has also emphasized "the urban law" rather than "the land law". At the same time the social changes in the formation of urban space has accelerated the changes in the study of economics on this kind of issue from "the land economics" to "the urban economics". This paper examines how the both changes have arisen and how they relate reciprocally from the view point of land economics. The key concepts of this consideration are "social common use-value" and "public benefit". The study concludes the necessity and inevitability of establishing new "Land Law".

社會科學研究 第61巻 第3・4合併号(2010-03-10発行)

(更新日: 2012年 11月 2日)

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