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『社会科学研究』第68巻第2号
共同所有住宅における居住と収益との関係ーイングランド法を素材にして
Can a co-owner of a shared home enjoy sole occupation without paying occupation rent to other co-owners?
金子敬明/KANEKO Yoshiaki
イギリス 家族住居 共同所有 信託 第三者
抄録
イングランド法において、ABが共同所有する住宅につき、Bは、権原を有するからといって、そこに居住するという状態を裁判上実現できるとは限らない。むしろ、もし、同様に権原を有するAがそこに居住している場合には、争いがABらの間にとどまる限り、裁判上、BがAをそこから追い出すことができる(まして、Bがそこに居住できるようになる)可能性は、かなり低い。しかし他方で、Bは、Aから定期的に賃料相当額を得るという形で、ある種の「所有」による便益を得ることは、とりわけABがもともとカップルであり、関係悪化のため今や同居は困難であるという事情がある場合には、裁判上実現できる可能性が高い。
もっとも、このような、AもBも別の形でではあるが当該住宅からの便益を享受できるというある種の「平衡」状態は、Bの債権者Xが、Bが当該住宅につき有する持分権を差し押さえた上で、その売却を命ずる裁判を申し立てた場合には、完全に崩壊させられる可能性が高い。
abstract
Where A and B, typically a couple, co-own a home and then for some reason only A enjoys its occupation, can B insist that A should vacate the home for B’s sole occupation? Or can B force A to pay occupation rent to B? This paper deals with how English law solves these questions.
Though B has title in the home, B cannot insist on his occupation as long as A, another co-owner, occupies it in peace. B can instead force A to pay occupation rent. In this way, both A and B can have some benefit from owning the land, though in a different form.
But once B’s creditor, X, gets a charging order on B’s share in the home, X can have the home sold in vacant possession, which means that A is forced to get out of it when the sale is completed.
社會科學研究 第68巻 第2号(2017-04-10発行)
(更新日: 2017年 4月 10日)