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『社会科学研究』第68巻第2号
フランス法における夫婦財産別産制の清算—「別産制の共通制化論」解題—
La liquidation du régime de la séparation de biens en droit français – vers la communautarisation ?
齋藤哲志/SAITO Tetsushi
夫婦財産制、別産制、贈与、婚姻費用、不当利得
抄録
共通制を法定夫婦財産制とする法体系における別産制の選択は、清算の簡便さへの志向を、また、共通制からもたらされる保護の拒絶を意味するかにみえる。しかし、しばしば清算は紛争化する。このとき、判例は、夫婦の属性に応じた複数の救済措置を講ずる。
第一に、別産制を採用する夫婦であっても、共同生活の必要から財を共通化する。にもかかわらず、夫婦の一方は、婚姻が解消されると当初の選択どおりの財の分離を要求する。裁判所は、一方で、夫婦間での財の移転の性質決定を操作して、他方で、基礎財産制を活用して、清算それ自体を否定してしまうことで、夫婦の他方を窮状から救おうする。
第二に、夫婦の一方は、他方の事業または財に対して、あたかもそれが夫婦の事業または財であるかのように、なんら見返りを期待せず、労務を提供する。しかし、当初の別産制選択が仇となり、婚姻解消後にはなんら利益に与ることができない。裁判所は、そうした夫婦の一方に対して、最低限の報酬を与えるにとどめることなく、夫婦の他方が独占しようとする利益を分かち与えようとする。
社會科學研究 第68巻 第2号(2017-04-10発行)
(更新日: 2017年 4月 10日)