東京大学社会科学研究所

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研究

『社会科学研究』第71巻第1号

ロールズ正義論における政治的自由の位置づけ
 ――コンスタン=バーリンのリベラルな伝統との関連で
Rawls, Political Liberty, and the Liberal Tradition from Constant to Berlin
濱 真一郎/HAMA Shinichiro

Keywords: 政治的諸自由の公正な価値の保証,古代人の自由と近代人の自由,機会均等原理,格差原理,善の諸構想の尊重

抄録

 ジョン・ロールズは,正義の第一原理について説明する際に,基本的諸自由をリスト化している.本稿が注目するのは,ロールズがリスト化している基本的諸自由における,政治的諸自由(投票権および政治的権威のある公職に就く権利)の位置づけである.言い換えれば,基本的諸自由における,政治的諸自由とその他の(非政治的な)諸自由との関係である.ロールズが参照するバンジャマン・コンスタンやアイザィア・バーリンによると,思想の自由や良心の自由(コンスタンの言う「近代人の自由」)は,政治的自由(コンスタンの言う「古代人の自由」)のために犠牲にされてはならない.ロールズの理解では,彼の「公正としての正義」という構想も,思想の自由や良心の自由(近代人の自由) よりも,政治的自由(古代人の自由)の方が内在的価値は低いとする.よって,ロールズの「公正としての正義」は,コンスタンやバーリンに代表されるリベラリズムの伝統に連なっている.ただし,ロールズによれば,彼の「公正としての正義」は,特定の人々にとっての政治的な生が,その人々の善の構想にとって中心部分であることを(コンスタンやバーリンが否定しないのと同じように)否定するものではない.ロールズはここにおいて,政治的諸自由の公正な価値を保証すべきだという見解を提示するに至る.以上で確認したように,ロールズの自己理解では,彼の「公正としての正義」という構想は,コンスタンやバーリンのリベラリズムの伝統に連なっている.しかし,その構想は,もしもそれが政治的諸自由(古代人の自由)の価値の重要性を強調しすぎるならば,コンスタンやバーリンの伝統から逸脱してしまうのではないか――本稿ではこの問題について検討することにしたい.

abstract

John Rawls makes a list of the equal basic liberties. This essay pays attention to the status of political liberties (for example, the right to vote and to participate in politics) in the list. According to Banjamin Constant and Isaiah Berlin, freedom of thought and liberty of conscience (what Constant called ‘the liberties of the moderns’) are superior to political liberties (‘the liberties of the ancients’). Rawls admits that his conception of justice, justice as fairness, agrees with the strand of the liberal tradition (represented by Constant and Berlin) that regards the equal political liberties as having in general less intrinsic value than freedom of thought and liberty of conscience. However, Rawls adds that justice as fairness does not deny that some will find their good importantly in political life; thus for them this life is a central part of their complete good. Now, Rawls suggests that people with greater wealth and position usually control political life and enact legislation and social policies that advance their interest. So, he includes his first principle of justice a proviso that the equal political liberties, and only the liberties, are to be guaranteed their fair value. Does Rawls’s conception of justice keep faith with the liberal tradition of political thought from Constant to Berlin?


社會科學研究 第71巻 第1号(2020-06-11発行)

(更新日: 2020年 8月 6日)