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『社会科学研究』第71巻第1号
ロン・フラーの法理論
――その基底にある人間観と社会構想――
Legal Theory of Lon Fuller: The Underlying Conceptions of Human and Society
平見 健太/ HIRAMI Kenta
Keywords: 自然法論,法実証主義,法の内面道徳,法の支配,相互性(reciprocity)
抄録
本稿は,法学者ロン・フラーの主著『法の道徳』に着目し,「法の内面道徳」を中核とする独自の自然法論を読み解くことを通じて,人間と社会に対するフラーの洞察を探ることを目的とする.法を「人間の行動をルールの統制に服せしめようとする企て」として理解するフラーは,かかる企ての成否を評価するための準拠枠組として,「法の内面道徳」の主張を展開する.これは,法の定立とその運用過程において尊重されるべき手続的要請についての主張であり,ここにフラーは法と道徳の接点を見出そうとする.この点我々の注意を惹くのは,著書の中で僅かながらに触れられている,フラーの理性的人間観である.この人間観を起点にフラーの主張を再検証すれば,フラーがなぜ,権威者と法の受範者とのあいだの相互性に拘っていたのか,またかかる相互性と「法の内面道徳」の主張が どのように関わるのかなど,これまで不明瞭とされてきたフラーの種々の議論に新たな光をあてることができ,ひいてはその法理論構想の意義や他者の議論との関係性を改めて問うことが可能になるものと思われる.
abstract
This article aims at revisiting the unique natural law theory of Lon L. Fuller in his book The Morality of Law and, through this analysis, exploring his insights into human and society. For this purpose, we focus on the Fuller’s view of a reasonable person, i.e., “a responsible agent” as a starting point of the construction of his legal theory. It is from this perspective that we could shed new light on Fuller’s seemingly unclear or complicated arguments including his strong commitment to the concept of reciprocity, or interaction between lawgiver (authority) and legal subject and, therefore, we could reappraise the meaning and significance of his unique legal theory and the relationships between his theory and others’.
社會科學研究 第71巻 第1号(2020-06-11発行)
(更新日: 2020年 8月 6日)