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研究

社研セミナー

The Governing of everyday risks: between state and individuals
武田宏子(シェフィールド大学/社会科学研究所客員教授)

日時:2009年10月13日 15時-17時
場所:センター会議室(赤門総合研究棟5F)

報告要旨

 「リスク」に関する様々な言説は、日常生活において人々が持つセキュリティについての理解や感覚に訴える。それを通じてリスク言説は、一方では「国民」を「統治」する手段・道具として、他方では統治機構に対して対抗的な政治的・社会的活動や運動の資源として、どのように機能しているのだろうか。この点を、戦後日本における事例に言及しながら考察したい。

 具体的には、(1)統治の言説上の戦略としてリスク言説を理解する諸研究を参照する。近年、先進諸国で統治システムの再編成が進行しているが、その過程で国家―市場―社会―個人の関係に生じている変化を理解するために、リスク言説についての研究は重要な視座を提供する。(2)報告者がこれまで取り扱ってきた事例(新生活運動、福井県大野市の地下水保全運動、食の安全)に即して、家族のリスク管理と統治行為の連関の仕方を、戦後日本の具体的な文脈の中で検証する。(3)最後に、以上の議論を発展させるために計画している今後の事例研究に言及したい。日常生活のリスクに関する言説が統治システムにおいて果たす政治的機能は、いかにしてより包括的・系統的に議論することができ、そのインプリケーションはどのようなものだろうか。こうした大きな問題にアプローチするために、事例研究の更なる充実を目指している。

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