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研究

社研セミナー

女性管理職のキャリア形成国際比較調査に向けて:日仏調査から
石黒久仁子 (文京学院大学外国語学部 助教)

日時:2013年 3月12日 14時50分-16時30分
場所:センター会議室(赤門総合研究棟5F)

報告要旨

 企業における女性の活用は現代日本社会における喫緊の課題となっている。しかしながら、マネジメントの中枢への女性の進出は多くの先進諸国に比べて後れをとっているのが現状である。本研究は、企業における女性のキャリア形成を促進・阻害する要因を、事例企業の人事マネジメント施策の分析と、企業に勤務する女性管理職への聞き取り調査を基にした質的データの分析から検討する。日本企業と女性の事例の分析からは、女性を取り巻く様々な要因の中で、「opportunities/constraints」「values/norms」「motivations/personality」「affective attachment」の四つの要素が、ひとつの企業に女性が長期勤続し昇進するために大きく影響していることが見出された。

日本国内の状況の決定要因を比較によってより良く把握し、日本へのインプリケーションを検討するべく、国際比較調査に着手し、第一段階としてフランスの事例研究を実施した。フランスにおいては女性の労働力率が高く女性のマネジメント層への進出が年々高まっている一方、政治経済の分野における女性の参画が非常に進んでいるとはいえないことがデータなどから見出された。また、フランス社会において学歴は男女共にキャリア形成に大きな影響を与えることが概観された。このような状況下、事例として取り上げた企業の取組からは、女性を含めたダイバーシティマネジメントの積極的な推進が行われていることが概観され、またインタビューを実施した女性の経験からは、自律的なキャリア形成に向けて、女性自身が組織におけるジェンダー差を乗り越える実践的なアプローチを行っていることがうかがえた。

これらの結果から、企業内部におけるジェンダーへの更なる着目、個人と上司・会社間でよりコミュニケーションが取れる人事制度・職場環境の構築、女性自身がジェンダーに係る課題を自ら解決する姿勢とそれを促進する社会認識の醸成の必要性などが、日本社会と企業に対するインプリケーションとして見出された。


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