東京大学社会科学研究所

東京大学

MENU

研究

社研セミナー

デジタルプラットフォームと労働法の課題
水町勇一郎(社会科学研究所)

日時:2021年10月12日(火)15時~16時40分
場所:オンライン(Zoom)
参加方法:所外の方はこちらのお申込フォームからお申込ください。前日にZoomのURLを送付いたします。

(申込締切日:10月11日)

報告要旨

 デジタルプラットフォーム型ビジネスの展開は、経済法、消費者法、租税法など法律の世界でも新たな議論を生んでいる。プラットフォームを介在させた新たな取引形態の台頭は、既存の法制度では対応できない問題を生み、法制度の改革を必要としている。

 

 労働法においても、プラットフォーム型ビジネスの台頭に伴い、世界的に議論が巻き起こっている。典型的な問題は、プラットフォーマーが提供するアプリを利用して自動車または自転車で人や食品の輸送をしている者(例えばウーバーのタクシー運転手、ウーバーイーツの食品配達人など)が当事者間の契約では個人事業主として位置づけられている(例えばサービスの提供は個人事業主と消費者間の直接契約により行われ、プラットフォーマーは取引の場を提供しているにすぎないと説明されている)が、このサービス提供者(運転手、配達人等)に対して「労働者」としての保護を及ぼさなくてよいのか、プラットフォーマーは「使用者」としての責任を負わなくてよいのかという点にある。この問題は、アメリカ・カリフォルニア州の2018年4月30日Dynamex事件最高裁判決、2020年11月3日のカリフォルニア州法Proposition 22、フランスの2019年12月24日の移動オリエンテーション法(Loi d'orientation des mobilités)、2020年3月4日Uber事件破毀院判決、ドイツの2020年12月1日Crowdworker事件連邦労働裁判所判決、イギリスの2021年2月19日Uber事件最高裁判決(Uber BV and others v Aslam and others [2021] UKSC 5)など、各国で労働法の新たな動きを生み出している。日本では、2021年3月26日にフリーランスガイドラインが策定された。

 このような近時の労働法の大きな動きのなかで、この問題を今日的な事象をめぐる現代的な問題と捉え、法技術的な議論を展開するだけでは、問題の本質に辿り着くことはできないように思われる。そもそも労働法はどのような社会的基盤・前提で生成し、展開され、今日に至っているのか。デジタルプラットフォーム型ビジネスの出現と台頭は、この労働法の基盤・構造にどのような課題を投げかけているのか。そのなかで各国はどのような法制度の改革を行おうとしているのか。本報告では、このような歴史的・比較法的な視点から、デジタルプラットフォーム型ビジネスがもたらす労働法上の課題を明らかにし、日本における法制度の改革への示唆を得ることを試みたい。