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「入会林野と所有者不明土地問題」の歴史理解:「入会権の解体」との対比で
高村学人(立命館大学)

日時:2024年4月9日(火)15時~16時40分
オンライン(Zoom)
報告言語:日本語

報告要旨

 入会林野とは、近世の柴草刈り慣行に由来する入会権が今日でも認められる林野である。入会林野・入会権は、私的所有権が成立する前段階と位置づけられてきたため、古くから社会科学の様々な分野で研究が行われてきた。しかし、入会地の登記には、変則が多く、明治期のムラの世帯主全員の連名で登記されたままになっていることも多い。それゆえ、昨今の法改革にて所有者不明土地に分類され、登記名義の適正化が求められるようになった。
 高村学人・古積健三郎・山下詠子編著(2023)『入会林野と所有者不明土地問題』岩波書店では、コンプライアンスの高まりが登記を重視しすぎる傾向を招いたという認識のもと、入会地と所有者不明土地とを区別することが望ましい法運用を導くと論じた。同書で企図したのは、川島武宜・潮見俊隆・渡辺洋三編(1959,61,68)『入会権の解体Ⅰ,Ⅱ,Ⅲ』岩波書店に取って替わる理論と歴史理解の提示である。『入会林野と所有者不明土地問題』ではアンチ・コモンズの理論に依拠したが、これを用いることで、入会林野が個人分割されずに維持されてきた理由を説明したり、所有者不明土地問題の背後にある多数共有者問題の構図を描くことができる。
 報告では、入会林野・入会権の現状と意義、所有者不明土地問題の法改革が及ぼす影響を説明した上で、『入会権の解体』との対比で『入会林野と所有者不明土地問題』が試みた歴史理解を重点的に論じる。アンチ・コモンズ発生の歴史的要因とそれが今日の森林管理に及ぼす影響をセンサス・既存調査の二次分析から示し、アンチ・コモンズを解く鍵を近世入会の最近の研究も手掛かりとしながらスケッチしたい。


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