東京大学社会科学研究所

東京大学

MENU

研究

社研セミナー

婚姻を「測る」:『人口動態調査』における結婚・離婚の届出遅れとその補正
余田翔平(東京大学社会科学研究所)

日時:2025年7月8日(火) 15時~16時40分
場所:

オンライン(Zoom)

使用言語:日本語

報告要旨

 本報告では、婚姻の発生や解消に関する人口学的指標を得るための方法を提示することを目的とする。具体的には、初婚、離婚、および再婚について、ある人口における単位時間あたりの生起率(人口動態率)を得るために必要なデータの補正について議論する。

 日本をはじめとする東アジアでは、結婚と出生の結びつきが依然として強く、出生の大半は婚姻関係の中で発生する。例えば日本の場合、婚外出生の割合は2%程度である。こうした文脈においては、出生力は(1)既婚者割合と(2)夫婦出生力の2つの要素に分解できる。これは、日本における出生力の変動メカニズムを理解し、かつ将来の出生率の見通しを立てる上で、婚姻行動の動向に関する精緻な人口学的分析が不可欠であることを示している。

 しかしながら、婚姻の発生や解消に関する公的統計である『人口動態調査』の集計結果として報告される『人口動態統計』(厚生労働省)で表章される年齢別婚姻数や年齢別離婚数は「同年発生・同年届出」のケース、すなわちt年にその事象が発生しかつ同年に届出がなされたものに限定されている。『人口動態調査』のこうした特性から、人口動態数の年次別の推移を正確に把握するためには「届出遅れ(late registration)」の補正を施す必要がある。本報告では、『人口動態調査』の調査票情報を用いて、婚姻と離婚における届出遅れの発生パターンおよびその年次変化を記述するとともに、こうした届出遅れを補正した上での当該事象の発生数や生起率の算出方法を提示する。


TOP