東京大学社会科学研究所

東京大学

MENU

研究

社研セミナー

TPPと21世紀の国際貿易・投資ルール
中川淳司(社会科学研究所)

日時:2013年 11月12日 14時50分-16時30分
場所:センター会議室(赤門総合研究棟5F)

報告要旨

 WTOのドーハ開発アジェンダが行き詰まる一方で、主要国は通商政策の軸足をFTAに移している。その背景にはサプライチェーンのグローバル化の進行がある。伝統的な国際分業(生産と消費の国境を超えた分散)では、関税などの国境障壁の引下げが求められた。しかし、生産工程やサービス供給が国境を超えて分散するサプライチェーンのグローバル化では、サプライチェーンの円滑な運営を支えるため、国境障壁の引下げだけでなく、国内規制の調整を含む広範囲の政策が求められる。WTOの多国間交渉が行き詰まる中で、これに応える手段としてFTAが活用されるようになった。とはいえ、FTAは規範の名宛人が締約国に限られ、また、協定毎に内容が異なるため、サプライチェーンのグローバル化を支える手段として限界がある。FTAをグローバルな規範形成につなげる必要がある。

 TPPは、グローバルな規範形成につながるFTAとして注目される。交渉を主導する米国は、TPPを「高水準で広範囲の、21世紀のFTAのモデル」にする目標を掲げており、TPPはサプライチェーンのグローバル化を支える先進的な内容を盛り込む可能性が高い。また、TPP交渉には多数の国が参加しており、締約国はさらに増える見込みである。最後に、TPPは他の広域FTA交渉で参照される可能性がある。ただし、以上はあくまでも可能性に過ぎない。特にBRICSなどの新興国からは強い抵抗が予想される。報告の結びに、TPPをグローバルな規範形成につなげる方策を提案する。


TOP