研究
社研セミナー
「貨幣経済の謎―ケインズは第二公準を捨てたのか? 」
大瀧雅之(社会科学研究所)
日時:2018年5月8日 15時00分-16時40分
場所:センター会議室(赤門総合研究棟5F)
報告要旨
ケインズ経済学は労働供給側の金銭的インセンティブ(古典派の第二公準)を捨象して成立するとするのが、従来の考え方である。しかし「一般理論」を注意深く読むと、事実はその逆で、ケインズはこの問題に対して十分配慮していたことがわかる。ここでは現代の進んだマクロ経済学の観点から、この問題をとらえなおす。そのうえで有効需要理論が成立するために本当に重要な要因は、貯蓄と投資の意思決定の分離であることが明らかにされる。 しかし宇沢教授による投資関数の定式化(トービンのq理論)は、この問題の解決とはならないことが同時に明らかにされる。そして最後に、この意思決定の分離を理論化するには、「欲求の二重符合の困難」が導入されねばならないこと、すなわち貨幣経済に固有の理論としてのみ有効需要の概念が成立することが、モデルによって明らかにされる。