社研セミナー

法知識の社会的配分:日本における司法制度改革の法社会学的分析
Annelise Riles(コーネル大学法科大学院/社会科学研究所客員教授)

日時:2009年4月14日 15時-17時
場所:センター会議室(赤門総合研究棟5F)

報告要旨

 この発表では、内田貴教授と共同執筆した論文(『ドレクセル大学ローレビュー』創刊記念論文として出版予定)をもとに、法知識について私が現在進めている研究を紹介する。

 内田教授と共同執筆した論文は、アメリカの制度をモデルとした日本の法教育制度改革を批判的に検討したもので、社会における法的専門知識の配分を分析するための枠組みを提案したものである。一方には、法的専門知識の「集中型」モデルがあり、そこでは、専門知識は法律家に独占され、一般の人々の法についての知識は低くなる。その反対は、法的専門知識の「拡散型」モデルで、そこでは、社会や組織が共同で法的専門知識を支え、一般の人々の法についての知識も高くなる。アメリカのシステムが「集中型」に近いとすれば、日本のシステムは歴史的に見て「拡散型」に近いものと考えられる。この論文では、日本において法律家ではない「法知識労働者」の役割に焦点をあて、双方のシステムの長所と短所を吟味している。結論として、それぞれのシステムには様々な長所・短所はあるものの、法的知識の集中型モデルと比較して、法的知識の拡散型モデルは、究極的には経済効率性に優れており、また、自由で民主的な社会が目指すものによりよく適合していると論じている。 この観点からすれば、アメリカ的システムを性急に模倣しようとする現在の日本の制度改革は、深刻な問題を抱えたものであるといわざるを得ない。

 発表では、こうした議論を、日米における法務と法的専門知識の特質についての私のより広い関心に関連付けたい。現在社会科学や社会理論で、専門知識の性格やそれをめぐる政治的関係について、また、労働者としてのプロフェッショナルや専門家についての論争が進行中である。私の研究では、意外にも、法的専門知識の持つ力が、「アマチュア(素人)主義」とでも呼ぶべき仕事へのアプローチに由来することが明らかになった。この結論が、様々な職業における専門知識やアマチュア主義についての既存の理論に、どのような貢献をするか検討したい。そして最後に、アマチュアとしての法律家という理解が希望学のテーマとどのように関係してくるのか、検討したい。

 発表は英語で行うが、当日日本語のレジメを配布する。

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