社研セミナー

ナショナル・アイデンティティの多元性と多様性
田辺俊介 (社会科学研究所)

日時:2010年 5月11日 15時-17時
場所:センター会議室(赤門総合研究棟5F)

報告要旨

 「近代社会においてもっとも強力なアイデンティティの神話」(Smith 1991= 1998)とされるナショナル・アイデンティティ。その存在を無視しては、20世紀の2度の大戦において、かくも多くの人々が自らの命を賭して戦った答えは見えてこない。そしてグローバル化のただ中にある21世紀の現在日本においても、ナショナル・アイデンティティは、人々の行動や意識を(たとえ無意識であっても)強く規定し続けている。例えばネイションに対する誇りの感情と関連する歴史教科書、排外性と関連する外国人参政権への賛否など昨今の諸問題と直結する。人々のナショナル・アイデンティティの解明は、「今」・「ここ」にある社会科学的課題なのである。

 そこで本報告は、一般の人々の抱く「○○人意識」としての「ナショナル・アイデンティティ」を、量的社会調査データの統計分析を通じて明らかにすることを試みる。具体的には、ナショナル・アイデンティティという概念を「誰をネイションの成員と見なすのか」(ネイションの成員条件)、「ネイションの何に誇りを感じるのか」(ナショナル・プライド)、「ネイションの外部を排除するのか」(排外性)などの下位概念に分けて分析し、その多元性を検討する。次いでそれら下位概念の高低の組合せから、人々の抱くナショナル・アイデンティティの多様性(例えば、成員条件が厳しく、誇りの念が強く、排外的な「国粋主義型」と、条件が緩く、誇りの念も低く、非排外的な「反国家主義型」など)を示し、同時にそれぞれの類型の担い手の社会的属性を検討する。

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