社研セミナー

貨幣・雇用の基礎理論
大瀧雅之(社会科学研究所)

日時:2011年 7月12日 15時-17時
場所:センター会議室(赤門総合研究棟5F)

報告要旨

 価格の伸縮性と合理的期待形成を前提とした下で、ケインズ経済学を理論的に再構築した。ここで言う価格の伸縮性とは、各経済主体が意思決定する際に、価格の改訂にメニューコストやカルボルールのような先験的硬直性が一切存在しないという意味である。

 この前提をLucas(1972)の無限期間に世代重複モデルに適応して、以下の結論を得た。

  1. 価格が限界費用で決定される限り(内点均衡が保証される限り)、ワルラス均衡において貨幣は非中立的となり、ヒックス・サミュエルソン流の45度線分析を、標準的な効用最大化・利潤最大化から導出することができる。
  2. 端点均衡(例えば完全雇用均衡)において貨幣数量説的な期待が形成されると、それは自己実現的(self-fulfilling)で、価格は貨幣数量に正比例して決定される。
  3. 財市場の均衡概念を、独占的競争(われわれの設定ではナッシュ均衡となるが)に入れ替えると、拡張的な財政・金融政策がパレートの意味で資源配分を改善することになる。
  4. これに加えて労働市場の均衡概念を、McDonald-Solow(1981)流の「効率的労使交渉」を二段階ゲームに書き直したものに入れ替えると、有効需要の不足による「非自発的」失業が存在しうることを証明した。
  5. 労働生産性に世代を通じた学習効果を導入すると、ニューケインジアンの不自然な短期フィリップス曲線とは異なり、価格の硬直性を前提とせずとも右下がりの長期フィリップス曲線が存在することを明らかにした。

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