東京大学社会科学研究所

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研究

社研セミナー

「高齢者の社会的統合とウェルビーイング」
菅原 育子 特任講師(東京大学高齢社会総合研究機構)

日時:2016年 1月12日 15時00分-16時40分
場所:センター会議室(赤門総合研究棟5F)

報告要旨

 社会的統合(social integration)は、個人の「社会」とのつながりの程度を示す概念である。社会的統合の程度、ないしは「社会とのつながりの量と質」は、私たちの生活に様々な影響を及ぼす。高齢者の社会的統合に関しては、仕事をはじめとする社会的役割からの引退、親しい他者との死別による私的な社会関係の縮小など、主に「喪失」というネガティブな文脈で議論されてきた。つまり、高齢者の社会的統合の問題は、心身の健康や死亡率、幸福感や満足感といったウェルビーイング(またはイルビーイング)指標との関連で注目され、いかに高齢者が社会とのつながりを維持するかが、老年学の重要な課題となってきた。一方で、加齢に伴い社会とのつながりの「質」が変化するという視点が生涯発達心理学を中心に議論されている。その文脈では、引退や縮小は失うことではなく、選択と集中の結果であると捉えられる。就業や社会参加の有無、同居家族の有無、といった二択の議論から、社会的統合のどの側面がどのような経路をたどってわれわれの心身の状態に寄与するのか、心理社会的なメカニズムの解明が求められている。
 本報告では、社会心理学の立場から、いくつかの社会調査データの解析結果を基に、高齢者の社会的統合とウェルビーイングとの関連について議論する。特に、有償無償の社会活動と、友人関係という私的なつながりを取り上げ、加齢または時間の経過によってそれらの社会的統合の様相がいかに変化または維持されるか、またそれらがウェルビーイングとどのような関連にあるのかを検討する。


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