社研卒業生の現在(いま)

荒見 玲子 さん

名古屋大学大学院法学研究科でご活躍の荒見玲子さんに、社研在籍当時や最近のご様子についてお話を伺いました。荒見先生は現在マサチューセッツ工科大学(MIT)政治学部で海外研修中です。

ロックポート荒見先生

写真:ロックポートというボストン郊外の港町で

プロフィール

荒見 玲子(あらみ れいこ)

名古屋大学大学院法学研究科(准教授)
専門分野:行政学・政策学・地方自治

社研在職期間:2011年4月~2014年3月

                 助教

荒見玲子ウェブサイト

 社研は、私が社会人として働いた最初の組織であり、博士論文研究を完成させ、色々なチャンスを与えて頂き、研究者として半人前から一人前に育ててくれた場でした。至らぬ点も多かったとは思いますが、皆様に暖かく見守っていただき、このスペースでは書ききれないほどとても濃密な3年間でした。学んだことも、人間関係も含めて、すべてが現在に至る私の土台になっており、社研での勤務がなければ、今の私はなかったように思います。

 社研では主に、 全所的プロジェクト『ガバナンスを問い直す』 ローカル・ガバナンス班 の事務局の仕事と、 Social Science Japan Journal (SSJJ) の書評担当助手の仕事を中心に携わりました。まず、SSJJの編集会議で、ノーブル先生をはじめ編集委員の先生方の議論を伺いながら、査読や書評を行う上で何が重要なのか、3年間コンスタントに学ぶことができ、社研卒業後、研究の評価に関わる機会が非常に増える中で、SSJJで学んだことは大きく生かされています。英語で研究活動をする力を身につけることも将来の目標の一つとして意識するようになりました。

 最も印象に残っているのは、大沢先生と佐藤岩夫先生が主宰されていた全所的プロジェクト『ガバナンスを問い直す』のローカル・ガバナンス班の活動と、玄田先生、宇野先生、中村尚史先生らの 希望学福井調査 の各種活動でした。調査・研究会、そして 『ローカルからの再出発』(有斐閣 2015年) 『大飯原子力発電所はこうしてできた』(公人社 2015年) 『希望学 あしたの向こうに―希望の福井、福井の希望』(東京大学出版会 2013年) といった成果物の公刊、合評会に至るまで、一つのプロジェクトの完成までの作業を間近で見せていただきました。特に希望学に関わる先生方の地域の方々と関係を構築していく姿は、それまでの行政学の研究者としての関わり方や社会調査に関する自らの固定概念を再考するきっかけとなりました。

 また、この全所的プロジェクト及び福井調査では、博士論文の基礎となる調査のサポートを資金面でも技術面でも頂きました。佐藤香先生が時間を割いてサーベイの調査票の確認をしてくださったこと、博士論文提出期限が迫る中で、調査の過程で困難にぶつかるたびに、ローカル・ガバナンス班でご一緒していた宇野先生や五百旗頭先生(現法学部)が、いつもさり気なく助けてくださったことをとても良く覚えています(博士論文は来年に公刊予定です)。お二人の先生には、最初から最後まで3年間本当に大変にお世話になり、とても多くのことを学びましたし、博論執筆という苦しい時期が大半を占めていたのに、いつも思い出すのは勤務がとても楽しかったということばかりです。

 改めて振り返ると、社研はとてもフラットな職場であると同時に、若手の育成システムがとても整っているところでした。セミナーや研究活動の過程で助教でもきちんと意見を求められ、学際的に活発な意見が飛び交う中で、むしろ自分のディシプリンの守備範囲がどこで、何が強みで何が弱みなのかを強く意識するようになったことは、私のキャリア上の得難い経験だったように思います。また、科研費の申請書の書き方の講習会、研究倫理の講習会やデータアーカイブの特別セミナーなど、研究の最先端の組織にいることで、自然と様々な知識を身につけることができました。研究員連絡会議や若手研究員の会などで、若手研究者への配慮を当時の末廣所長(現学習院大学)、石田所長がきめ細かに行ってくださり、それぞれの様子を気にかけてくださったことも有難かったです。事務の方、図書室の方からも実務的な様々なことを教わりました。こうした若手を育成するという明確な姿勢から得たものを、勤務校の大学院生と接しながら、還元できればと思います。

 社研卒業後は、名古屋大学大学院の法学研究科に地方自治論の担当として着任しました。名古屋では教育や大学行政も含め新しい生活が始まり、ゼミ生や、愛知県下の地域の方々など新たな出会いがあり、約2年間楽しく過ごしました。

 そして今年の3月から、2年間の海外研修の機会をいただき、マサチューセッツ工科大学(MIT)政治学部に在籍しています。海外旅行すら数えるほどしか経験のなかった私が留学を志したのは、社研の助教の1年目に、念願だった ミシガン大学のICPSRのサマーセミナー でアナーバーに研修に行かせていただいた経験がきっかけでした。しかもMITでのアドバイザーとの最初の出会いも、住んでいる家も、こちらでできた最初の友人も、社研時代に所属したことで得たご縁がきっかけとなっています。現在在外研究中の石田先生にも再会し、こちらでの過ごし方についてご示唆を伺うなど、大変お世話になっています。


写真:Redsox_vs_Yankees戦@Fenway Park


写真:MITオフィスの側から見た夕暮れのバックベイ

 こちらでは素晴らしい環境のもと、選びきれないほどの様々なセミナーや授業に少しずつ出ながら毎日盛りだくさんに過ごしています。例えば独立記念日など様々な行事を通じアメリカの歴史・文化を学ぶなど満喫しています。大統領選ではアメリカの政治・社会の動揺と抱える現実を体感することができましたし、最先端の選挙分析も聞くことができました。今もケンブリッジのいろいろなところで、社研時代のつながりやご縁がきっかけで話が弾む機会も多く、国際的なネットワークも含め、あらゆる面で改めて社研から大きな財産を頂いたのだなと再確認した9ヶ月でした。


写真:大統領選直後にMITのLobby7に学生が貼った
みんなの思いを書いた模造紙


写真:独立記念日にボストンのOld State Houseで行われる
独立宣言の読み上げのセレモニー

ぎゅぎゅっと濃密な社研での3年間、名古屋大学での新たな2年間、そして現在はMIT、次々と環境が変わる中で研鑽を積んでいらっしゃるのですね。今後のますますのご活躍を期待しております。写真もたくさんありがとうございました。

(2016年12月22日掲載)

最近、嬉しかったことは何ですか?

名古屋大学で初めて担当した学年のゼミ生が、皆、無事希望通りの進路に決まったことです。名古屋大学法学部は国立には珍しく、2年生から4年生まで3学年合同・3年間持ち上がりでゼミを行います。着任時無名の教員のところに来てくれた最初のメンバーであり、先輩たちがいない中で、課題も厳しかったのに、フィールドワークやゼミ論文にも積極的に取り組み、後輩も引っ張ってくれました。留学が決まったため2年間しか見ることができず、大事な就活の時期に何もしてあげられなかったことは申し訳なかったのですが、持ち前のガッツで社会を良くしていけるよう、活躍してほしいと願う次第です。
留学中は、とても刺激的な日々と同時に、最初は語学の面でもなかなか思うように行かないこともあり、学生たちから連絡をもらってとても勇気づけられました。名古屋に赴任し、東京以外の地域で初めて生活し、学生と接することで様々なことを教わりました。地域を支える志ある学生が少しでもより良く羽ばたけるよう、微力ながら貢献できればと思います。

写真:2015年8月6日 スターフォレスト御園(愛知県東栄町)での合同ゼミ

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