社研卒業生の現在(いま)

柴垣 和夫 さん

現在ハリウッド大学院大学でビューティビジネス研究科長としてご活躍の柴垣和夫さんに、社研在籍当時や最近のご様子についてお話を伺いました。

柴垣和夫さん
プロフィール

柴垣 和夫(しばがき かずお)

ハリウッド大学院大学(ビューティビジネス研究科長・教授)

専門分野:日本経済論・現代資本主義論・企業論

社研在職期間:1961年4月~1994年3月

助手(1961.04-1964.03)
助教授・教授(1965.04-1994.03)

 このコラムは,若いときに短期間社研に勤務し.その後社研の外に定住した方が登場する場所だと思っていたら、「停年」(定年の東大用語でした。いまはどうなのでしょう?)まで勤めた私にお鉢が回ってきて驚いています。でも社研OBには違いないので、先例に倣って在職時の回顧から始めましょう。

 30余年の社研生活で一番充実していたように思えるのが助手時代です。任期があったためにいわゆる雑用はほとんど課されず、義務は所員会に出席することと助手論文を書くことだけでした。いまでも野心作と自負している著作『日本金融資本分析』(1965年、東大出版会)を執筆したのがこの時期でした。また、助手で組織する助研会も活発で、職員組合の担い手であり、政府が企んだ大学管理法制定の試みに反対する全学助手集会の音頭をとったりもしました。さらに当時の社研は、アメリカ研究所の創設計画とからんで存廃の危機にありましたが、論文集『社会科学の基本問題』(上下)の刊行でこの危機を打開しようとされた高橋八郎右衛門(幸八郎)所長に「助手諸君が書けば教授たちも書かざるを得ない」とおだてられもし、所内でも助研会の地位はけっこう高かったと思います。

 この論文集のあと共同調査『京葉工業地帯の工業化と都市化』を経て、「全体研究」(いまの表現では「全所的プロジェクト研究」)が始まったのですが、奇しくも私は定年まですべてのプロジェクトに参加執筆し、東大紛争後に始めた『戦後改革』では、運営委員会の責任者を務め、土田とも子さんの協力を得て共同研究体制の基礎固めをしました。この間1968~69年の東大紛争では、私の研究室を含めて社研の一部が学生や院生に占拠されたこともあります。それはともかく、助教授になって以降は、10年にわたった経済大学院の紛争対策をはじめ、東大全体の改革委員会(教官)の幹事、『社会科学研究所の30年― 年表・座談会・資料 ― 』(1977年)や『東京大学百年史・[部局史4社会科学研究所]』(1987年)の編纂など、研究外業務が多く、落ち着いて研究に集中できなかった後悔の方が多い感じです。

 東大定年後、日本で初めて金融学科が創設された武蔵大学に10年、そのあと新潟産業大学に新設された大学院(経済学研究科修士課程)に4年勤務しました。前者は旧制7年制高校の後身で「ゼミの武蔵」を標語にした小人数教育が有名で、学生満足度の高さを誇っていました。社研との縁も深く、私のほかに助手OBで後藤光蔵・二階堂有子の両君を送り、先方からは仁田道夫・中村圭介の両君を迎えています。私が赴任した当時はあまりにものんびりした雰囲気に、「満足度が高いのは要求が低いせいではないか」と皮肉ったりしましたが、近年はとても活性化し、学生の質も高まっていると聞いています。

 他方、新潟産業大学は、柏崎の市街から10キロほど内陸の、東電が刈羽原発の見返りに市に寄付した「夢の森公園」に隣接する文字通りの田園大学でした。一時は経済・人文・産業システムの3学部を擁していましたが,私が赴任した頃から若年人口の急減や中越大地震の影響を受けて学生数が激減し、現在は経済学部一つに圧縮されています。武蔵同様、学生に対するきめ細かい指導が徹底していて、就職率抜群の実績をあげていました。わずか4年の勤務でしたが、いまも客員教授として年2回の集中講義を続けています。退職後は社研で同僚だった、そして新潟県を調査していた西田美昭君に引き継いでもらいました。

 そして現在も、六本木ヒルズの一角に2008年度に開設された、ハリウッド大学院大学ビューティビジネス研究科に現役の教授として勤めています。美容関連産業の経営者・指導者の育成・再教育を目的とした専門職大学院大学です。美容産業など、私とは縁のない世界だと思っていましたが、大部分が零細経営で、美容師の待遇も劣悪です。超高齢化社会の到来を前に、ビューティビジネスの人材育成は、「老醜」という言葉を死語にするための人生のサービス残業として、それなりの意義があると考えた次第です。最近閉店しましたが、40年通ったスナックがある六本木と言う場所に惹かれたことも事実でした。

中国・九寨溝:林健久夫妻と

写真:中国・九寨溝:林健久夫妻と (2011.10)

 喜寿を過ぎて幾つもの持病を抱えていますが、日常生活は普通で良く、年に一度は海外旅行を楽しんでいます。昨年は社研助手時代に1年先輩で、経済学部名誉教授の林健久君夫妻と中国四川省の九寨溝を訪れました。

 これまでこのコラムに登場された皆さんより、生きた歳月が長い分だけ、長い文章になってしまったことをお許し下さい。

在籍当時の貴重なお話をありがとうございました。社研の大先輩として、ますますのご活躍をお祈りしております。

(2012年3月13日掲載)

最近、嬉しかったことは何ですか?
柴垣和夫さん わが家の庭の柚子が,この冬はかつてない大ぶりの実をつけました。
暮れから毎日、柚子風呂を楽しんでいますが、今年は3月いっぱい保ちそうです。

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