諮問委員会

第4回 諮問委員会議事要旨

Ⅰ.諮問委員会の開催日時および出席者


日時 2011年4月8日(金)15:00〜17:05
場所 社会科学研究所第一会議室
出席者 (諮問委員 あいうえお順)
浅倉むつ子 委員 (早稲田大学大学院法務研究科教授)
寺西重郎 委員 (日本大学商学部教授)
田中耕司 委員 (京都大学次世代研究者育成センター教授)
馬場公彦 委員 (岩波書店編集部)
欠席者 (諮問委員)
平野浩 委員 (学習院大学法学部教授)
列席者 (社会科学研究所)
末廣昭 所長
石田浩 副所長
大沢真理 協議員
中川淳司 協議員
佐藤博樹 センター運営委員会委員長
佐藤岩夫 前協議員
平島健司 前協議員
川久保亨 事務長
佐藤弘美 総務チームリーダー(記録)
土屋雅史 総務チームサブリーダー(記録)

 議事に先立ち、末廣所長から、出席者紹介、本会の趣旨説明、配付資料の説明がなされたのち、議事進行係に寺西委員が互選された。

 まず、末廣所長から、資料1に基づき、第3回諮問委員会までに諮問を受けた「広報活動」「全所的プロジェクトと個人の研究」「研究成果の出版を含めた社会への発信」について説明があり、これらに対する社研の取り組みを中心とする2010年度の活動報告があった。

 次いで、各委員から、次のとおり意見等があった。

Ⅱ.2010年度報告、配布資料を受けて各委員からの意見・感想等


1.社研の基本方針、研究組織としての在り方

● 研究の進め方として、個人研究と共同研究のバランスをどうとるか。

● 外部資金(特に大型科研)獲得のために共同研究に偏りがち。共同研究は所外との人的つながりが強化されるが、半面、所内でのネットワークが希薄になり、所内の研究面での切磋琢磨に影響がでてこないか。ひいては個人研究の時間的制約が増すのではないか。

● 社会科学研究所は他の国立大学附置研究所の例と異なり、研究所全体の拠点ではなく、センターの部分拠点化を実施しており、これはこれで適切な選択だったと思う。ところで、拠点化によるメリット(もしくはデメリット)はあったのか。

(社研)元々、センターは全国レベルで共同利用・共同研究の活動を展開していたので、活動そのものに変化はないが、拠点化により新たな資金(年1100万円)を獲得した結果、共同研究などの側面で活動しやすくなったメリットはある。ただし、交付金額は申請金額に対して思いの外乏しい。これは他機関でも同様の様子だ。

● 法学の研究者の立場から見ると、大学でも学会でも研究の専門化(たこ壷化)が進展している。その点、社会科学研究所では、法律系の研究者が他の社会科学分野の研究者と交流して共同研究を進めており、現在の情勢のなかで、社会科学研究所の存在意義は高まっていると思う。このような活動はぜひ持続していってほしい。若手の就職状況を見ても、共同研究と個人研究が組み合わさっており、いい研究者を育てているようだ。共同研究で培ったものを各個人が所属する学会などに波及していけばよいと思う。また、そのことにより学問を変革する道も拓けると思う。

● 社会科学や人文科学の分野から、自然科学の分野と対話ができる人材を育てることが、現在の問題を研究する場合には不可欠である。大きな視野を持てる人材育成は社会科学研究所の使命だと思う。その点、社会科学研究所の全所的プロジェクトなどではどうなっているのか。個別の学会のレベルでは困難でも、日本学術会議に見られるように、他分野に精通する人材の輩出ができるのではないか。

● 社会科学研究所は、学問的には社会科学を代表する研究機関である。したがって、自然科学の研究者に対してきちんと発言できる立場にあることを自覚してほしい。大学の研究科ではできないテーマについて、研究所ならではの社会科学分野での総合力を発揮して取り組んでほしい。特に今回の東日本大震災に対しては、自然科学の分野と協力して取り組み、被災地や日本の復興・再生に対して影響力を行使してほしい。

● 個々の成果物、共同研究の成果物をみても、内容はきわめて多彩であり、学術的な面で社会貢献をしていると思う。

(社研)今回の震災は、社会科学に重要な課題を突き付けた。壊滅的被害を受けた地域の「地域社会」「産業」の復興に対して、どのように協力・支援するか、社会科学がどういう形で貢献できるのか、個々の研究者だけでなく研究所として知恵を出す方向で検討したい。現在実施している全所的プロジェクト「ガバナンスを問い直す」は、企業・市場、生活保障システム、ローカル・ガバナンスの3つの分科会から構成されているが、この3つを横断する形で「災害・復興ガバナンス」といった共通テーマを立てることができないかどうか、検討を始めている。

(社研)もう一度、共同研究と個人研究の問題に戻りたい。外部資金をベースとする共同研究と社会科学研究所の全所的プロジェクトの大きな違いは、メンバーの構成にある。外部資金による共同研究の場合には、内部ではなく外部の研究者が多数を占めるケースが多いが、社研の全所的プロジェクトには、そのつど所員の半分近くが参画している。今回不参加でも、次回は参加するひともいるので、中期的にみればほぼ全員が参加していることになる。逆に、所内からの参加を促すために、ディシプリンを横断した研究テーマの設定がなされる。他方、所内の研究者は、自分の守備範囲を超えて共通の研究テーマに取り組む。この点が全所的プロジェクトの大きな特徴である。
  「災害・復興ガバナンス」という新しいテーマについては、現在の雰囲気は<3・11以後>という視点が強い(原発に対する自然科学の従来のスタンス、農業・漁業に対するこれまでの政策、政府の危機管理能力。これらに対するネガティブな評価や全面的な見直しを求める視点)。しかし、社会保障の問題、雇用の不安定性の問題、政府のガバナンスの問題などは、<3・11以後>に顕在化した問題ではなく、<3・11以前>からある問題であり、今回の大震災への対応の過程で、この点をあいまいにしてはならないと思う。<3・11以前>の問題も含めて、日本社会全体の問題を総合的に検証する必要があると考える。

(社研)外部資金に依存した共同研究と社研の全所的プロジェクトを区別する、もうひとつの大きな違いは、財源の違いにもある。全所的プロジェクトの場合には、仮に外部資金が獲得できなくても、大学運営費交付金から活動に必要な人件費や事業費を優先的に配分し、支援を行っている。一方、グループ共同研究の場合は、一部大学運営費交付金を使って支援しているが、基本的には自助努力の方針でやっている。

2.予算収入構造の見通しと今後の対策

● 2013年度までに大学運営費交付金を含めて研究所の予算が低下していくというのは、当然予想できる事態だが、これほど減少幅が大きいとは思わなかった。大変驚いている(全員が資料9の「収入構造の推移と見通し」のグラフを見ての感想)

● 外部資金を獲得すれば、それに伴って事務処理量が増加し、研究以外の仕事の負担が当然増すが、そういったことを敬遠する傾向が所員にあるのかどうか。

● 受託研究を積極的に確保していくことも必要だと思う。

(社研)事務処理量が増加することを避けるために、外部資金の獲得に消極的になるという傾向はない。グラフに示した2012年度以降の収入の見通しは、東大本部が試算した文教関係予算の今後の削減率をもとに計算している。予想以上に低下が激しい理由は、グローバルCOEの間接経費が中止になったこと、2つの大型の寄付金事業(人材ビジネス研究とパネル調査)が2009年に完了したこと、近未来事業とグローバルCOE連携事業が2012年度に終了することによる。したがって、外部からの寄付金を探すことが必要となるが、特定企業からの寄付金は、社会科学の分野ではセンシティブな問題を引き起こしかねない。したがって、外部資金による大型研究事業に申請するしかないと考える。

● 収入が減るのを回避できない以上、支出をどう管理・抑制するかが課題となる。支出の重要な項目は人件費であろうが、人件費を大幅に抑制すれば、今度は若手研究者の活動の場を制限することになる。そのあたりのバランスをきちんと考えていかなければならない。

(社研)その点はよく理解しており、さまざまなプロジェクトとそれに必要な人件費(特任研究員や学術支援専門職員など)について、今後、見直し作業を行う予定でいる。

3.調査対象とした地域との関係、社研がどのように意義を見出していくか

● 全所的プロジェクトのかじ取りはどのようにやっていくか。

(社研)3つの分科会(班)と並行して、今後は先ほど述べた「災害・復興ガバナンス」といった、3つの分科会を横串にするようなテーマを考えてみたい。いずれにせよ、研究所が3つの班の研究を続けながら、グローバルCOEの共同研究も含めて、震災復興の問題にどのように結び付けていくか、そして、研究所としてこの問題に組織的にどう取り組んでいくかが課題となると思う。

● 震災復興に向けての活動と希望学との関連はどうなっているのか。また、社会科学を専門とする研究所として、今後の長期的な関わりをどのように考えているのか。

(社研)東京大学全体としての対応に協力するとともに、社研としては、これまでの釜石市との人的ネットワークを生かして、希望学のメンバーを中心に「釜石支援チーム」を4月4日に立ち上げた。このチームを中心にして、社研独自の協力・支援を続けていきたい。

● 希望とリスクはいわば表裏の関係にある。人間の行為によりリスクが生じる。リスクをいかにマネジメントできるかが「希望学」の課題である。この震災の非常時に、社会科学に対する期待も大きい。にわか仕立ての政策立案ではなく、これまでの研究の蓄積を生かした提言を、ぜひ検討してほしい。

● 現場に行き、直接的で短期的なニーズに対応したヒューマンケアが一方にあり、他方で復興や防災に関する長期的なグランドデザインの提案もある。欠けているのは、この両者を結び付ける議論である。この議論に不可欠なのが社会科学だと思う。社会科学(社会科学者)が今後の日本の復興にどのように関わっていくのか。これは社会科学研究所の課題でもある。

(社研)短期と長期の両方から協力・支援するという時間軸の視点と同時に、マクロとミクロという複眼的な視点による支援も必要だと思う。これは希望学などを通じて長く地域調査をやってきた経験から感じることだ。つまり、釜石市など地域の復興にどう貢献できるかというミクロの視点と、日本全体の社会経済的なグランドデザインの作成にどう貢献できるかというマクロの視点。この2つの視点をうまくリンクさせることができないか、全所的プロジェクトの枠組みの中で考えてみたい。
  見方を変えると、社会に存在する様々な言語をつなぐ「翻訳者」に社研がなれないか。つまり、自然科学者の言葉、社会科学者の言葉、政策担当者の言葉、専門家の言葉、地域住民の言葉、それぞれの異なる立場と意見を翻訳し、人と人とをつなぐ役割が担えればと思っている。

配付資料

  • 社会科学研究所『年報2010年版』
  • 社会科学研究所、センター、全所的プロジェクトの各パンフレット
  • 議事次第
  • 資料1 第3回東京大学社会科学研究所諮問委員会での議論
  • 資料2 研究体制と研究事業・成果物の発信
  • 資料3 社会科学研究所の各種事業に関わる活動単位と人員(2011年度、4月現在)
  • 資料4 社会科学研究所ホームページ
  • 資料5 社会科学研究所の活動を紹介する16枚のパネル(2010年10月作成)
  • 資料6 全所的プロジェクト研究「ガバナンスを問い直す」2010年度活動
  • 資料7 社会調査・データアーカイブ研究センターの2010年度の活動
  • 資料8 社会科学研究所の助教・特任研究員等の就職状況(概ね2003年〜)
  • 資料9 社会科学研究所の収入構造2004年度から2013年度(見込み)
  • 資料10 写真集1 社会科学研究所の活動と研究成果 2010年度
  • 資料11 写真集2 2010年度 社会科学研究所の所員が刊行した本

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