自己点検・自己評価報告書

Ⅱ. 社会科学研究所の組織と活動
教育活動

1)研究所における教育活動

 研究所は、学部とは異なり、研究を本務とする部局である。しかし、大学院教育については、全所員が、関係する研究科における大学院教育に参加してきた。とりわけ法学政治学研究科および経済学研究科については、社会科学研究所の所員の参加はそれぞれの大学院教育の不可欠の構成要素となっている。また、教養学部における全学自由研究ゼミナールについても、研究所としてこれを位置づけ、毎年開講してきた。学内・学外におけるそのほかの教育活動への参加は各所員の任意であるが、教授会の承認事項とし、とくに学外への出講については、本務である研究への妨げにならないようにという観点から、一定の時間枠を設けてきた。

 しかし、近年、研究所における教育活動の新たな位置づけの見なおしを求める事情がいくつか生じている。

 第一は、東京大学が大学院研究科を基礎的部局とし、大学院教育を重点とする大学への改組をおこなったことである。その結果、従来は、各研究科において、研究所教官も学部の教官と対等の地位に立って大学院教育に参加していた(いわゆる「イコール・フッティング」の原則)のにたいして、現在では、研究科の教官を中心とする大学院教育に「協力」するという形式をとるに至っている。このことはさしあたり研究所教官の大学院教育への実際のあり方に大きな変化をもたらしているわけではないとはいえ、研究所の大学院教育への関わり方の見なおしを促す事情のひとつとなっている。

 第二に、新領域創成科学研究科に見られるような新しい研究科が生まれ、さらには大学院とは別の新しいタイプの教育機関が構想されるなかで、従来は法学政治学研究科および経済学研究科に比較的集中してきた所員の教育活動が、より多様な場で行われる方向に向かいつつある。これは研究所としての教育活動のプロフィールを拡散させる可能性をもはらんでいる。

 以上二つの事情は、社会科学研究所およびその各所員が大学院を中心とする全学の教育制度のなかでどのような貢献をなすべきかについての省察を求めるものであり、そこには、社会科学研究所独自の教育活動の場とあり方を構築する可能性を追求することを求めている。

 「国際日本社会」独立専攻を設けるという構想は後者のような模索の現われにほかならないが、実を結ぶには至っていない。この構想のなかには、社会科学研究所が現に事実上はたしている、世界における社会科学的日本研究の担い手を育てるという役割を大学院教育の形で明確に制度化するという意図も含まれていた。この役割を別の形で制度化する可能性について検討することが必要である。

 今後考慮されるべきもうひとつの方向は、研究とりわけプロジェクト研究やデータ・ベースの活用などの社会科学研究所本務としての活動に即して若手研究者に対する教育的な機能を発揮していくということである。ここでは、助手、研究機関研究員、リサーチアシスタントなどの諸制度をそれぞれどのように位置付け、活用するかについての検討も必要である。

2)大学院教育

 社会科学研究所の所員は、法学政治学研究科、経済学研究科及び新領域創成科学研究科にお協力講座を提供し、所員はこれらの研究科においていて、常時、所定の教育科目を担当している(「各所員の活動」の項を参照)。また、一部のスタッフは人文社会系研究科、総合文化研究科及び教育学研究科においても大学院教育を担当している。法学政治学研究科および経済学研究科においては、研究科委員会委員を派遣するなど、それぞれの研究科の運営にも参加している。大学院生の指導教官も担当している。

 1999年度における研究所スタッフの各研究科での開講科目とテーマは以下の通りである。施設は、それぞれの研究科の施設のほか、社会科学研究所の演習室も利用している。

法学政治学研究科

石田  浩  政治学特殊研究(社会科学における数量的データ分析)
小森田秋夫  ロシア・旧ソ連法特殊研究(ロシアとポーランドの憲法判例)
田中 信行  中国法特殊研究(現代中国法の諸問題)
田端 博邦  労働法特殊研究(ECとヨーロッパ各国の派遣労働)
中川 淳司  国際経済法特殊研究(経済制度の国際的調和―規範と制度)
原田 純孝  民法特殊研究(不動産法の諸問題)
平島 健司  ヨーロッパ政治史特殊研究(ドイツ現代政治分析)
平石 直昭  日本政治思想史特殊研究(H.Spencer, Social Statics の購読)
廣渡 清吾  ドイツ法特殊研究(ドイツにおける戦後法理論)
樋渡 展洋  政治学特殊研究(現代日本の国際政治経済)
藤原 帰一  国際政治特殊研究(戦争の終わりかた)
        国際政治特殊研究(国際政治入門)
宮崎 良夫  行政法特殊研究(行政法と教授の方法)

経済学研究科

大沢 真理  経済史演習(開発とジェンダー)
大瀧 雅之  理論経済学特論(ダイナミック・プログラミングと経済動学)
加瀬 和俊  経済史演習(近代日本の公共事業史)
橘川 武郎  日本経済史Ⅱ
工藤  章  世界経済(国際経済理論)
佐藤 博樹  労使関係(人的資源管理、組織行動)
渋谷 博史  現代財政特論(現代アメリカ財政研究)
清水  誠  基礎経済統計(統計制度論)
末廣  昭  アジア経済(アジア経済論とIMF・世界銀行)
田島 俊之  中国経済(現代中国経済)
中村 圭介  労働経済特論(労働調査)
西垣  通  産業経済特論(情報社会論)
西田 美昭  経済史論文指導
仁田 道夫  労働経済特論(日本の労使関係)
橋本 壽朗  日本経済
松村 敏弘  現代日本経済特論(法と経済学)

総合文化研究科

工藤  章  国際経済関係(日米欧資本主義の関係史)

新領域創成科学研究科(環境学)

田端 博邦  国際日本社会論Ⅰ
大沢 真理  国際日本社会論Ⅱ

教育学研究科

石田  浩  社会科学における数量的データ分析

3)全学自由研究ゼミナール

 駒場の教養学部では、全学の部局が一般教育課程の学生を対象に実施する「全学自由研究ゼミナール」の制度を設けている。社会科学研究所も、毎年、1ゼミナールを開講している。

 社会科学研究所の開講するゼミナールは、これまで一つのテーマについて複数の所員(および部分的に所外の研究者)が、それぞれの専門分野からアプローチするというオムニバス方式で実施してきた。多くの場合、各所員が1コマずつ担当するという形をとっており、したがって、演習ではなく連続講義が実態である。このような方法は、学生にたいしては、さまざま分野のさまざまな研究者から一度に講義をうけることができるというメリットがあり、研究所の側では負担の公平を図りやすいというメリットがある反面、講師間の意思疎通がかならずしも行き届かない場合もあり、学生側に消化不良や受動性をもたらすというデメリットも考えられる。したがって、1人または少なくとももっと少人数の所員がゼミナールを担当するという、これまでとは違った方法も検討されるべきである。

 最近10年間にとりあげたテーマは、以下のとおりである。

   1989年度 現代社会とフェミニズム――男女平等の社会科学的検討
   1990年度 日米関係――相互依存と摩擦
   1991年度 社会主義とは何か?――その歴史と現在
   1992年度 現代日本社会の解析
   1993年度 日本の民主主義――理論・歴史・現状
   1994年度 ペレストロイカと改革・開放――中ソ比較分析
   1995年度 現代日本の企業と法
   1996年度 現代日本の企業
   1997年度 規制緩和と社会科学
   1998年度 雇用・失業をめぐる政治と経済
   1999年度 「20世紀システム」

 これらのうち、1992年度および1999年度は全所的プロジェクト研究の、1994年度はグループ共同研究の成果をそれぞれ踏まえたものである。このような場合の他は、終了後、可能なかぎりその内容を出版することが目指されており、1989年度、1990年度、1991年度についてはすでに出版され、1997年度および1998年度についても刊行を準備中である。

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