自己点検・自己評価報告 各所員の研究活動

石田浩

1.経歴

1954年 9月2日生まれ
1979年3月 上智大学文学部社会学科卒業
1983年5月 米国ハーバード大学大学院社会学部M.A.
1986年11月 米国ハーバード大学大学院社会学部Ph.D
1985年10月~88年12月 英国オックスフォード大学 セント・アントニーズ・カレッジ,ナッフィールド・カレッジ研究員
1989年1月~90年12月 米国コロンビア大学社会学部助教授
1991年1月~94年12月 米国コロンビア大学社会学部准教授
1995年1月~99年3月 東京大学社会科学研究所助教授
1999年4月 東京大学社会科学研究所教授

2. 専門分野

比較現代社会大部門,社会運動分野,専門分野:比較社会階層論

3. 過去10年間の研究テーマ

  1. 世代間移動の国際比較
  2. 学歴と社会的地位に関する国際比較
  3. 学歴社会論
  4. 労働市場における男女格差
  5. 社会移動研究とジェンダー
  6. 学校から仕事へのトランジション
  7. 昇進構造の日米比較
  8. 社会移動研究における数量分析

4. 1998年度までの主要業績

  1. 「学歴と社会経済的地位の達成-日米英国際比較研究」『社会学評論』40号、252-266頁, 1989年
  2. "Intergenerational Class Mobility in Post-war Japan" (with John H. Goldthorpe and Robert Erikson), American Journal of Sociology 96, January 1991, pp. 954-992.
  3. Social Mobility in Contemporary Japan: Educational Credentials, Class, and the Labour Market in a Cross-national Perspective, Macmillan Press and Stanford University Press, 1993.
  4. "Class Origin, Class Destination and Education: A Cross-national Comparison of Ten Industrial Nations" (with Walter Muller, and John Ridge), American Journal of Sociology 101, July 1995, pp. 145-193.
  5. "Gender Inequality in Authority and Autonomy in the Workplace in Japan, Britain, and the United States," International Journal of Japanese Sociology 4, September 1995, pp. 75-98.
  6. "Stratification and Attainment in a Large Japanese Firm" (with Seymour Spilerman), Alan Kerckhoff (ed.), Generating Social Stratification: Toward a New Generation of Research, Westview Press, 1996, pp. 317-342.
  7. "Educational Credentials and Promotion Chances in Japanese and American Organizations" (with Seymour Spilerman and Kuo-Hsien Su), American Sociological Review 62, December 1997, pp. 866-882.
  8. "Educational Credentials and Labour-Market Entry Outcomes in Japan," Walter Muller and Yossi Shavit (eds.), From School to Work, Oxford University Press, 1998, pp. 287-309.
  9. 『社会階層・移動の基礎分析と国際比較』(編著)1995年SSM調査研究会、1998年
  10. 「教育と労働市場 - 新規学卒者の就職と職安・学校」東京大学社会科学研究所編 『20世紀システム 第3巻 経済成長II 受容と対抗』 東京大学出版会、1998年

5. 社会科学研究所における自己の研究分野と研究活動の位置づけ

わたしは研究所の比較社会大部門社会運動分野に所属し、比較社会階層論を専門分野とする。1995年に社会科学研究所に移籍するまで、1976年よりアメリカとイギリス(ハーバード大学大学院、オックスフォード大学、コロンビア大学)で研究・教育活動従事してきた。そこでこうした海外での研究活動の蓄積を踏まえた上で、社会科学研究所着任後の研究所の活動と関連させながら、今までの研究活動をまとめてみたい。

(1)ハーバード大学大学院では社会調査論、数量分析、比較階層論などを学んだ。大学院時代に社会調査法、特に全国レベルの大規模調査の方法と分析手法を学んだことが、後で述べる社会科学研究所の活動と大きくかかわることになる。博士論文では「日米の社会移動の比較分析」をテーマとし、父親から息子世代への社会的地位の移動、学歴が世代間移動に果たす役割、出身階層と学歴が職業上の地位達成や所得に与える影響などを分析した。1985年からオックスフォード大学に研究員として移り、日米にイギリスを加えて社会移動の国際比較の枠組みを広げた。このことは単に国が ひとつ加わるという意味だけでなく、ヨーロッパの伝統に根ざした階層分析の手法をヨーロッパの社会学者との共同研究を通して学ぶ貴重な経験となった。これらの共同研究の成果は、米国の学術専門誌に出版され(主要業績(2)(4))、日英米の社会移動に関る比較研究も単著として出版された(主要業績(1)(3))。

(2)1989年からコロンビア大学社会学部に助教授として移籍し、社会構造と社会的不平等に関するマクロな国際比較研究(主要業績(5)(8))を継続すると同時に、階層のミクロなメカニズムにも着目し、企業内の昇進・移動、キャリア形成についての日米比較研究をコロンビア大学の同僚とともに立ち上げた。厳密な比較研究を目指すいう研究手法を一貫して採用することにより、日米企業での聞き取り調査や資料収集とともに社員の人事データベースの数量的な分析を手掛け、成果を上げてきた(主要業績(6)(7))。

(3)社会科学研究所に1995年に移籍したことは、わたしの研究上の大きな転機となった。第1に、社会科学研究所の特色である学際性ゆえに、自分の専門分野と異なる研究者との交流が著しく増えたことである。研究所ではじめての社会学者ということから、自分の専門分野以外の研究者にもわかるように社会階層・移動研究を説明し、議論するというチャレンジを経験したと同時に、他の分野の研究から多くの刺激を受けた。特に労働関係、政治関係の研究者からは、長期にわたる海外での研究生活のため十分に注意を払ってこなかった日本での研究蓄積について学ぶ機会があり、日本の知的コンテクストの中に自らの研究を位置付ける上で有益な示唆を得ることができた。第2の変化は、海外においては日本のデータの入手が極めて難しい状況にあったが、そのアクセスが格段に改善されたことである。この点に関して日本に戻った最大のメリットのひとつは、1995年に実施された「社会階層と社会移動全国調査」に準備段階からかかわることができたことである。総勢150人ほどの研究者が協力したこのプロジェクトは、全2巻の報告書を1998年に刊行し、わたしはその第1巻「社会階層・移動の基礎分析と国際比較」を編集した(主要業績(9))。さらに、社会科学研究所に保存されていたものの手付かずの状態にあった過去の調査データを整理し再分析する機会を与えられた。これにより歴史分析にまで研究の視野が広がり、歴史的資料を数量的に分析していくという新しい研究アプローチを切り開くことができた。

(4)研究所プロジェクト研究「20世紀システム」においては、第3巻「経済成長II-受容と対抗」に「教育と労働市場 - 新規学卒者の就職と職安・学校」を執筆した(主要業績(10))。この論文では戦後の経済成長を支えた人材基盤としての新規学卒労働力に注目し、学校と職業安定所が生徒と仕事のマッチングに深く関与することにより、移動性・適応性に富んだ若年労働力を整然と労働市場に送りこむことを可能したことを明らかにした。1950年代前半を舞台としたこの論文は、わたしにとって本格的な歴史的分析を行ったはじめての研究成果であると同時に、社会科学研究所に保存されている過去の調査をコンピューター上に再コーディングし分析したはじめての仕事でもあった。保存されていた1953年3月の中学校卒業生の進路調査を材料としながら、当時の職安職員、学校の就職担当教員、企業の採用担当者のインタビュー、政府統計、雑誌・新聞記事などの資料を縦横に用い、過去の調査の再分析の可能性を示した論文として意義があったといえよう。

(5)社会科学研究所が中心となって戦後行われた調査は、上記の卒業生の進路調査 以外にも多数あり、現在再コーディング、再分析を行う2つのプロジェクトが進行している。ひとつは1950年代の京浜工業地帯関連調査であり、もうひとつは1960年代の中小企業連関調査である。これらのプロジェクトに参加することで、研究所内の経済系の教官(橋本壽郎、仁田道夫、佐藤博樹、中村圭介)から、経済史、労使関係に関する知識を得ることができた。

(6)社会科学研究所のデータ・アーカイブ(SSJDA)の最も新しいプロジェクトのひとつに、様々な社会科学分野の研究者が利用できる汎用性の高い総合社会調査を大阪商業大学と共同で企画・実施するものがある。1回限りの調査でなく数年間にわたり基礎的質問項目を繰り返し調査することによってトレンド分析を可能にすると同時に他国の同様な調査で用いられている質問項目を盛りこむことによって国際比較分析を可能にするという野心的な試みである。ハーバード大学大学院時代の指導教官が図らずもアメリカで1972年から行われている総合社会調査の生みの親であり、当時受けたトレーニングや人的ネットワークがこのプロジェクトの仕事に役立つこととなった。 さらに、すでに存在する外国の総合社会調査データや日本のマイクロデータの2次分析を奨励する研究会を、佐藤博樹氏とともに社会科学研究所で主宰している。このようなマイクロデータの2次分析に基づく実証的な研究が日本の社会科学に根付くことがますます重要になってきており、そこで社会科学研究所の果たす役割も大きくなっていると確信している。

6. 今後の研究テーマ

  1. 産業社会の社会構造と社会的不平等
    Social Structure and Social Inequality in Industrial Societies
    日本をふくむ産業社会における社会構造と社会的格差に関して、今まで論文として執筆してきたものを中心に、1990年代のデータの分析を加えながら単行本としてまめあげる。
  2. 組織内移動・昇進、キャリア形成の日米比較研究
    A Comparative Study of Organizational Mobility, Promotion and Career Trajectories in Japan and the United States
    組織内移動・昇進、キャリア形成に関して人事データを基礎に実証的な比較研究を行う。研究成果を英文モノグラフとしてまとめる。
  3. 新規学卒者の労働市場の組織化に関する研究
    A Study of the Process of the Institutionalization of the Labor Market among School Graduates in Japan
    戦後日本の新規学卒者の就職が、職業安定行政と学校によっていかに組織化されてきたのかを分析するもので、研究成果を共著の著作として出版予定。
  4. 「質的数量データの分析」および「マイクロデータ2次分析」のテキスト執筆
    Categorical Data Analysis Textbook and Micro-data Analysis Textbook
    質的数量データのための分析テクニック(特にログリニア・モデルなど)の解説書執筆。マイクロデータを用いた2次分析の入門書執筆。

7. 主な教育活動

  1. 大学院
    法学政治学研究科において「社会科学における数量的データ分析」「社会階層と政治」,教育学研究科において「社会科学における数量的データ分析」を担当。

8. 所属学会

日本社会学会,日本数理社会学会,日本教育社会学会,American Sociological Association British Sociological Association, International Sociological Association, Association for Asian Studies, British Association for Japanese Studies

東京大学 社会科学研究所

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