自己点検・自己評価報告 各所員の研究活動

中村圭介

1.経歴

1952年 10月27日生まれ
1976年3月 東京大学経済学部卒
1976年4月~77年3月 野村證券投資信託委託(株)
1985年3月 東京大学大学院経済学研究科第2種博士課程単位取得退学
1985年4月~90年3月 雇用促進事業団雇用職業総合研究所研究員
1990年4月~96年3月 武蔵大学経済学部助教授
1992年8月~93年8月 アメリカ・コーネル大学労使関係学部客員研究員
1996年4月~98年3月 東京大学社会科学研究所助教授
1997年7月~98年8月 インドネシア・インドネシア大学日本研究センター客員研究(JICA長期派遣専門家)
1998年4月 東京大学社会科学研究所教授
1998年11月 経済学博士取得(東京大学)

2. 専門分野

比較現代社会大部門,労使関係分野,専門分野:労使関係論・作業組織論

3. 過去10年間の研究テーマ

  1. 産業別労働組合の構造と機能の研究
  2. ソフトウェア産業の経営管理と労使関係の研究
  3. 自動車産業、電機産業における生産分業構造と階層的労働市場の研究
  4. 戦後日本における品質管理の発展の研究
  5. 作業組織の日独比較研究
  6. 日本の労使関係・人的資源管理の展開と特徴に関する研究
  7. 電気通信産業における労使関係の変容の研究
  8. 日本製造業における生産システムと作業組織に関する研究
  9. 中国進出日系企業の生産管理と労務管理の研究
  10. インドネシアへの日系企業の技術移転研究

4. 1998年度までの主要業績

  1. 佐藤博樹、神谷拓平と共著『労働組合は本当に役に立っているのか』、総合労働研究所、1988年9月、259頁(1988年度沖永賞受賞)
  2. 「わが国産業別組織の類型と機能」、『季刊労働法』154号、総合労働研究所、1990年2月、23-49頁
  3. 戸塚秀夫、梅澤隆と共著『日本のソフトウェア産業-経営と技術者』、東京大学出版会、1990年3月、230頁(1990年度経営科学文献賞受賞、1990年度電気通信普及財団賞受賞)
  4. 橋元秀一と共著『生産分業構造と労働市場の階層性-自動車産業編-』、日本労働研究機構、1992年3月、257頁
  5. Co-authored with Michio Nitta, "Developments in Industrial Relations and Human Resources Practices in Japan," Richard Locke, Thomas Kochan and Piore, Michael (ed.), Employment Relations in a Changing World Economy, The MIT Press,1995, pp.325-358
  6. 宇田川勝、佐藤博樹、野中いずみと共著『日本企業の品質管理』、有斐閣、1995年12月、226頁
  7. 平木真朗と共著『電気通信産業の労使関係-歴史と現状』、日本労働研究機構、1996年3月、163頁
  8. 『日本の職場と生産システム』、東京大学出版会、1996年12月、268頁(1997年度日本労働関係図書優秀賞受賞)
  9. " Worker participation: collective bargaining and joint consultation," Mari Sako and Hiroki Sato (ed.), Japanese Labour and Management in Transition Routledge, 1997, pp. 280-295
  10. Co-authored with Padang Wicaksono, Toyota in Indonesia: a Case Study on the Transfer of the TPS, The Center for Japanese Studies-University of Indonesia,1999,112p

5. 社会科学研究所における自己の研究分野と研究活動の位置づけ

研究所における私の所属は比較現代社会部門であり、研究分野は労使関係論である。私は1996年4月に研究所に移ってきたばかりで、まだ3年しかたっておらず、さらに1997年夏から1年間、研究所のプロジェクトでインドネシア大学日本研究センターに派遣されており、私自身の研究が研究所全体の研究にどのように寄与し、また、研究所の研究環境がどのような影響を及ぼしたかについて明確に述べることは難しい。現時点において次のような点をあげられる。

(1)社会科学研究所へ移籍する時期に、私は、職場の作業組織を基盤に据えて日本の生産システムを捉えるという研究を行っていた。それは労使関係論的アプローチと作業組織研究的アプローチを私なりに融合し、日本の生産システムの特徴と限界を描き出すという作業であった(主要業績8の(8))。研究所においては安保教授を中心に、日本的生産システムの移転をめぐる研究が活発に行われており、私は、そうした一連の研究から学ぶと共に、私流の職場調査の結果と方法もなんらかのインパクトをもったのではないかと推測している。また、労働調査、職場調査は社研の伝統であり、これを受け継いでいくことも重要であると考えている。

(2)インドネシア大学日本研究センターでの研究協力プロジェクトへの参加は、上記のアプローチを踏まえて日系企業の技術移転を研究する絶好の機会を与えてくれた。従来、技術移転に関する研究は、固有技術(機械操作技術を含む)の移転の方法と現状を明らかにするというものが主流であったが、私は生産システム(特に生産管理、作業組織、労務管理に焦点をあてて)の移転を研究すべきだと考え、次のような分析枠組みを用意した。生産管理システムは技術的にみて比較的容易に移転できると考えられるが、日系企業の場合、柔軟で高生産性、高品質をうむ生産管理を現場で支える作業組織を進出先国でつくりあげることは難しい。さらに、作業組織の機能を十分に発揮させるためには、それに適合的な労務管理制度(特に報酬制度と教育訓練)を用意することが必要である。だが、労務管理においては、通常、進出先国で独自に生成、発展してきた諸制度が存在し、日本から移植しようとする制度が当該国独自の制度と衝突を起こし、日本の制度が変容あるいは破棄をせまられることもありうる。そして、生産管理、作業組織、労務管理の三要素間の適合性をみることによって、生産システムが成功裏に移転されたのか、あるいは成功裏に変容されたのか、または効率的な生産システムがつくりあげられていないのかを判断できる、そのように考えたのである。その成果は、Toyota in Indonesia, Toshiba in Indonesiaとしてまとめられ、上記の分析枠組みの有効性も確認できたと考えられる。職場の作業組織に基盤を据えつつ、それと生産管理、労務管理の関係を視野にいれて生産システムを分析するという私の方法は社会科学研究所における企業研究、産業研究を補完するものと考える。

(3)インドネシアから帰国後、全体研究「20世紀システム」の成果の合評会が行われていたのを良い機会として、このシリーズ全6巻を読むこととした(なお、私自身は1996年に移ってきたことから、この全体研究には参加していない)。地球的規模で考えるという意味でも、かつ法律、政治、経済のそれぞれを多面的にとらえるという意味でも、雄大な構想を有するこのシリーズは私にとって非常に刺激的であった。まだ、私の研究をこの構想の中にどのように位置付け、それをいかに有効に生かしていくかをはっきりと自覚できているわけではないが、今後の研究に必ずや大きな影響を及ぼすはずであると確信している。とりわけシリーズの4巻「開発主義」は、私がインドネシアにおける企業調査(地元企業と日系企業)を行っていたこともあって、非常に意義あるものであった。私は田島俊雄氏、末廣昭氏、藤原帰一氏から多くを学び、開発経済 学までも視野にいれた研究の重要性を認識することになった。

6. 今後の研究テーマ

  1. インドネシアにおける日系企業と地元企業の経営比較
    A comparative study on management between Indonesian firms and Japanese firms in Indonesia
    インドネシア大学日本研究センター協力プロジェクトの継続として、インドネシアのジャカルタ周辺で操業する製造業企業(地元企業200社、日系企業100社)を対象に、訪問他計式調査を行い、事業概要、市場戦略、生産管理、労務管理の比較を行い、あわせて日系企業における現地化の状況と問題を明らかにする。
  2. 購買管理の発展史に関する研究
    An historical study of purchase management
    グループ研究である下請研究会のメンバーとして、日産の購買管理の発展過程をヒヤリング調査により明らかにする。
  3. 情報技術革新が経済社会に及ぼす影響に関する研究
    A study of the effects of information technology on economy
    情報技術革新が職場、企業、産業に及ぼしている影響に関して、事例研究、大量察によって明らかにする。なお、このプロジェクトは研究所の次期共同プロジェクトとして運営していく予定である。
  4. ケーススタディの方法に関する研究
    Methodology on the case study
    個人研究として、引き続き、ケーススタディの方法を研究していく。具体的には、私がこれまでに関わった事例研究の中から、研究を進める上で留意すべきこと、守らなければならないこと、研究をまとめる上での工夫などを抽出し、叙述して、事例研究のノウハウを整理し、最終的には著書としてまとめる予定である。
  5. ソフトウェア企業の開発管理と作業組織研究
    A study of software development management and work organization in the software industry
    個人研究として、ひきつづき、ソフトウェア企業における開発管理と作業組織の事例研究、およびそれを踏まえて大量観察を行う。
  6. 教育公務員の労使関係研究
    A study of industrial relations in public schools
    前年度にひきつづき、日教組に設置された労使関係研究会において、教育公務員の労使関係を事例研究と大量観察により明らかにする。
  7. 労働組合の成果と課題に関する研究
    A study of outcomes and issues of contemporary Japanese labor unions
    前年度に引き続き、連合総合生活開発研究所に設置された「『労働組合の未来』研究委員会」に主査として参加し、現代日本の労働組合の成果と課題を検証する。

7. 主な教育活動

  1. 大学院
    経済学研究科で「労働経済特論」を担当。

8. 所属学会

社会政策学会,日本労使関係研究会議,日本労務学会,日本経営学会,Euro-Asia Management Studies Association

東京大学 社会科学研究所

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