自己点検・自己評価報告 各所員の研究活動

田端博邦

1.経歴

1943年 12月24日生まれ
1967年3月 早稲田大学法学部卒業
1972年3月 早稲田大学大学院法学研究科博士課程単位取得退学
1972年4月 東京大学社会科学研究所助手
1975年3月 同 退職
1976年3月 同 助教授
1990年4月 同 教授
1990年4~9月 ドイツ・ベルリン自由大学客員講師
1992年4月~94年3月 フランス・パリ第2大学に出張(文部省,私費)

2. 専門分野

比較現代法大部門,産業関係法分野,専門分野:労働法

3. 過去10年間の研究テーマ

  1. 職場労使関係の実態
  2. 戦後労使関係の歴史
  3. 公企業の労使関係
  4. 労働市場の変化と労働法
  5. フランス労働法と労使関係
  6. フランスの社会保障
  7. 労使関係と法の国際比較
  8. 多国籍企業と労使関係
  9. 「企業共同体」:労使関係と企業

4. 1998年度までの主要業績

  1. 「フランスにおける『労働の自由』と団結」、高柳信一・藤田勇編『資本主義法の形成と展開2』、東京大学出版会、1972年12月、135-190頁
  2. 「労働法における『労働組合論』」、『社会科学研究』33巻5号、1981年12月、261-278
  3. 「フランスにおける社会保障制度の成立過程」、東京大学社会科学研究所編『福祉国家2 福祉国家の展開(1)』、東京大学出版会、1985年6月、113-168 頁
  4. 「現代日本の労資関係と国家」、藤田勇編『権威主義的秩序と国家』、東京大学出版会、1987年2月、229-263頁
  5. 「集団的自治と国家介入-フランス協約法史を素材として-」、前田達夫ほか編『現代労働法の理論』、有斐閣、1988年
  6. 「福祉国家論の現在」、東京大学社会科学研究所編『転換期の福祉国家(上)』、東京大学出版会、1988年3月、3-75頁
  7. 「企業別組合の組織構造-その類型比較的研究-」、『社会科学研究』、40巻5号、1989年3月、1-101頁
  8. 「労働協約と組合運営」、戸塚秀夫・兵藤つとむ編『労使関係の転換と選択-日本の自動車産業』、日本評論社、1991年2月、189-249頁
  9. 「現代日本と労使関係」東京大学社会科学研究所編『現代日本社会5 構造』、東京大学出版会、1991年11月、217-270頁
  10. Industrial Relations and the Union Movement, in Banno Junji(ed.), The Political Economy of Japanese Society, Vol.1, The State of the Market?, Oxford University Press, 1997, pp.85-108.

5. 社会科学研究所における自己の研究分野と研究活動の位置づけ

社会科学研究所における研究分野は労働法であるが、労働法固有の研究としては法解釈学の領域ではなく、政治、経済、労使関係との関わりで労働法現象を分析する労働法法社会学の領域で研究をすすめてきた。こうした私自身の労働法研究の問題関心と方法は、研究所における学際的な討論と共同研究プロジェクトに深く結びついている。また、主要な研究は、研究所の全体研究、グループ研究および所外の共同研究通じて行われてきており、個人研究もそうした共同研究によって触発された面が強いと言いうる。以下、自己の研究史に沿って、社会科学研究所の研究体制との関連を述べることする。

(1)初期の研究、フランス団結権史の研究(主要業績4の(1))は個人的な問題関心から始まった研究であったが、当時の社会科学研究所のグループ研究であった「営業の自由」研究会に参加する機会を得、法律学者と経済史学者との間の討論に接するとになった。法の歴史研究を経済史との対話をしながらすすめるという研究方法上の関心はこの時期に形成された。

(2)最初に参加した全体研究「ファシズム期の国家と社会」では、フランスの戦時労働統制の法的論理を解明することを目的とする研究を行ったが、それはフランス労働史の通史的な概観まではすすめていたそれまでの個人研究においては空白の部分であった。したがって全体研究プロジェクトの発足によってはじめてファシズム、フランスのヴィシー体制、伝統的なコーポラティズム等の課題に着手することになった。研究成果(「ヴィシー体制下の法構造」、社会科学研究所編『ファシズム期の国家と社会5 ヨーロッパの法体制』)がどの程度全体のプロジェクトに貢献し得たか不明であるが、わたし自身の研究にとっては法と政治との関連を意識させるという点で重要な意味を持ったと言える。

(3)全体研究「福祉国家」では運営委員として、研究プロジェクトの企画と編集に携わった。「福祉国家」もまた、私自身にとってはまったく新しいテーマであった。研究所のメンバーの大多数にとっても同様であったが、社会保障制度のイロハから社会保障財政まで基礎的な勉強をするところから研究は開始された。このプロジェクトでは班研究会が異分野の研究者を集めて行われたこともあり、所外の社会保障専門研究者と所内の経済系研究者との討論がとりわけ緊密に行われた。研究成果に寄稿した論文はフランスの社会保障制度の歴史研究(主要業績4の(2))であったが、共同研究の過程で、日本を含む先進諸国の福祉国家の類型論、福祉国家の歴史的な転換過程にも問題関心は広がった。全体研究のフォローアップ研究会「転換期の福祉国家」では、主としてイギリスに素材を求めて、福祉国家をめぐる理論的な論争を検討することになった(主要業績4の(5))。

(4)福祉国家の研究の後半期から、グループ研究「国内労使関係調査」に参加し、自動車産業の職場調査に携わることになった。これより以前に労働法研究者で組織する調査を経験していたが、労使関係専門家の行う調査に学びたいというのが動機であった。この調査はわたしを除いてすべて労使関係の専門家で構成されていた。この調査によって職場の労使関係の実態を精密に観察することができたが、こうしたことが可能であったのは、社会科学研究所が学際的な構成になっていたことによる。研究成果は、主要業績 4の(6)のほか論文2、英文論文1がある。

(5)全体研究「現代日本社会」では、研究期間の後半に運営委員として最終的なとりまとめに加わった。このプロジェクトでは、福祉国家研究以来の先進国の国家・経済の型比較的研究の関心と労使関係調査の経験を基礎にして、日本社会の特性を労使関係の構造的な特質との関連において明らかにしたいという問題関心から研究を行った。研究成果に寄稿した論文(主要業績4の(7)、(8))は、戦後の労働運動と労使関係の歴史を素材に日本的な労使関係の理論的なモデルを析出しようとしたものであるが、背景には、労使関係の国際比較モデルに関する仮説(主要業績4の(3)が置かれている。

(6)最近の全所的研究プロジェクト「20世紀システム」では、労使関係の国際比較モデルを念頭に置きながら、20世紀という長いタイムスパンのなかでの基本的な変化の動向とグローバライゼーションによる今日的な変動の論理を析出することを試みた(主要業績7の(9))。研究成果で示した理論的なフレームワークはまだ仮説の域をでないが、なお現在、日英の労働組合調査、多国籍企業調査などによってミクロな実証によってさらにこれを検証する作業を継続している。

6. 今後の研究テーマ

  1. 労使関係・法の国際比較
    Comparative Studies of Industrial Relations and Law
    労使関係と法の構造的な特質を主要国について比較検討する。
  2. 多国籍企業の労使関係
    Industrial Relations in the Japanese Transplants
    日系多国籍企業の海外事業所における労使関係、生産組織、賃金制度について、実態調査に基づいて研究する。
  3. 比較日本社会の研究
    Japanese Society : Law, Society and Labour
    労働の領域を起点に、日本社会の特質を検討する。比較の対象とするのはアメリカとヨーロッパである。
  4. 労働市場の変化と労働法
    Changing Labour Markets and Labour Law
    近年の労働市場の変動と労働法の新たな展開を論理的に整理することをめざす。

7. 主な教育活動

  1. 大学院
    東京大学法学政治学研究科で「労働法」を担当している。

8. 所属学会

日本労働法学会,日本社会保障法学会,民主主義科学者協会法律部会,日本法社会学会,社会政策学会

東京大学 社会科学研究所

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