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自己点検・自己評価報告 各所員の研究活動
平島健司
1.経歴
1957年 | 9月25日生まれ |
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1980年 3月 | 東京大学法学部卒業 |
1982年 3月 | 東京大学大学院法学政治学研究科修士課程修了 |
1982年 4月 | 東京大学法学部助手 |
1986年 1月 | 東京大学社会科学研究所助教授 |
1987年 8月~89年 8月 | ドイツ学術交流会(DAAD)奨学生(ドイツ・コンスタンツ大学) |
1997年10月~98年 3月 | マックス・プランク社会研究所(ドイツ・ケルン)客員研究員 |
1998年 8月~99年 8月 | アメリカ・コーネル大学東アジアプログラム客員研究員(国際交流基金フェロー・松下国際財団研究助成) |
2. 専門分野
比較現代政治大部門,欧米政治分野,専門分野:専門分野:ドイツ現代政治・比較政治
3. 過去10年間の研究テーマ
- 戦間期ドイツ民主制の政治構造と崩壊
- 戦後ドイツ(ドイツ連邦共和国)の政治と歴史
- 西欧における政治的近代化の再構成
- 欧州統合の歴史的展開とEC/EUの構造
- ドイツ統一の政治過程と統一ドイツの政治構造
- 戦後日独国家(国家と社会)の比較
4. 1998年度までの主要業績
- "Stabilitat und Erosion der parlamentarischen Demokratie:stufenweise Auflosung der Wimarer Republik", Occasional Papers in Politics and Political Thought Nummer 2, Januar 1990
- 『ワイマール共和国の崩壊』東京大学出版会、1991年
- "Entwicklungen in der Politikwissenschaft in Japan und Westdeutschland nach dem Zweiten Weltkrieg", in : Hans-Joachim Konrad/Gisela trommsdorff(Hg.), Deutsch- japanische Begegnungen in den Sozialwissenschaften, Konstanz 1993, S.73-83
- 「歴史的パースペクティヴにおけるネオ・コーポラティズム論―西ヨーロッパの政治発展に関する一考察―」『社会科学研究』第43巻第6号、1992年、169-85 頁
- 「政治発展論再考―19世紀西ヨーロッパ近代とリベラリズムー」『社会科学研究』第45巻第2号、1993年、235-51頁 (6)『ドイツ現代政治』東京大学出版会、1994年
- 『ドイツ現代政治』東京大学出版会、1994年
- 「連邦制と政党制の変容」坂井栄八郎・保坂一夫編『ヨーロッパ=ドイツへの道』東京大学出版会、1996年、101-27頁
- 「戦後におけるヨーロッパ政治研究の展開―民主制と民主化の視角―」『社会科学研究』第48巻第4号、1997年、73-96頁
- 「欧州統合と民主的正統性―国家を越える民主的ガヴァナンスの試み」東京大学社会科学研究所編『20世紀システム 5 国家の多様性と市場』東京大学出版会、1998年、277-303頁
5. 社会科学研究所における自己の研究分野と研究活動の位置づけ
私は、大学院法学政治学研究科修士課程を修了し、法学部の助手を務めた後、86年に当研究所に助教授として赴任した。修士論文と助手論文のテーマは、政治史学の視角から戦間期ドイツの政治変動を分析するものであった。したがって、比較政治学の方法を自覚的に学びつつ、現代のドイツ政治を分析対象に加えていく上では、赴任後に経験した在外研究と、研究所のプロジェクト研究への関与が大きな意味を持った。過去10年間は、最初の長期在外研究を終えてから、まさしく二つの全所的研究プロジェクトが続いて進行した時期に相当する。以下では、自己の研究と二つのプロジェクト研究との相互連関に留 意しながら、研究の関心、主題と方法の変遷を跡付けたい。
(1)まず最初の研究所プロジェクト研究「現代日本社会」では、第2巻「国際比較[1]」において、オイルショック以後の時期、とりわけ80年代におけるドイツ政治の展開を分析する論文を執筆した(この論文は、その後に発表した他の諸論文とともに加筆修正を施して主要業績(6)の単著としてまとめた)。いくつかの政策分野について、ドイツの新保守主義政権が、どの程度変化をもたらし得たのかを検討するものであった。ここでは、政策変化の説明要因としてドイツに固有な国家制度や国家・社会関係を、他のヨーロッパ諸国のそれらと比較する視点をとったが、同巻の他の論文に対しても、各国の政策パフォーマンスを具体的に比較する視点の重要性を強調することができたと思う。
(2)次の研究所プロジェクト研究「20世紀システム」では、運営委員として第5巻「国家の多様性と市場」の編集を担当した。同巻は主として、戦後アメリカのヘゲモニーが後退する中で展開しつつある市場のグローバル化が、日本を含めた先進各国の法、経済、政治に及ぼす影響を、クロスナショナルな比較を行うことによって明らかにしようとするものであった。ヨーロッパ政治の研究を担当する立場からは、加盟国が、グローバル化に対抗して域内市場の形成を先行させ、単一通貨導入の段階にまで進めた欧州統合が、逆に加盟国の民主制にとってどのような影響を及ぼしつつあるのかを考察する論文を寄稿した(主要業績 (9))。同巻の編集を担当し、序論の執筆を通じて自分なりに得た新たな視点は、戦後のヨーロッパと日本にとって共通の環境要因となったアメリカと、日欧とは異なる民主制のもう一つのタイプとしてアメリカが有する意義であった。
(3)グループ研究の場として「比較政治研究会」に参加してきたが、同研究会は、歴史学や思想史研究までをも含み、政治学全体を包摂する幅広い関心の下に運営されている。研究会に臨む際の主要な関心は、ヨーロッパにおける政治的近代化の理論化にあったので、わたし個人の基礎的研究の発展に含めて以下に説明する。
すでに述べたように、最初の在外研究を終えたのちに、それまでに行った戦間期ドイツの民主制研究を主要業績 (2)として発表した。研究をまとめる上では、ドイツ政治を素材とする比較政治学の咀嚼が不可欠であったが(戦間期ドイツの民主制の崩壊をヨーロッパの地理的歴史的空間の中に位置づけるものとして主要業績 (1)がある)、それ以降の研究は、第一に、国家統一を経た現代ドイツ政治の分析(既発表の論文をもとにして書き下ろした主要業績(6)とその続編たる主要業績(7))、第二に、他の加盟国と同じくドイツの国内政治をますます強く規定しつつあるEC/EUの分析、第三に、これらの現代政治分析を補完するものとして、ヨーロッパを舞台とするより長期 に及ぶ政治的近代化の歴史的過程の再構成、の三つの方向に分岐した。これらのうち、過去の二つの研究所プロジェクト研究とは直接に関連してこなかった第三の研究では、中間な成果として主要業績 (4)、(5) を発表したが、歴史的な関心から言えば、欧州統合の展開(主要業績 (9))もその延長線上にあるといえる。
以上に述べたように、戦間期ドイツの政治史研究として始まったわたしのドイツ政治研究は、対象時期としては戦後から現代にまで伸長し、あるいは現代から近代化全体を捉える視点に移行しながら、地域としては中欧から西ヨーロッパに射程を拡大させてきた。今後も、それぞれの方向に研究を深めていきたい。さらに、「20世紀システム」プロジェクトにおける共同研究を経験した結果、パクス・アメリカーナの文脈におかれた日独国家の歴史的制度比較を行うことが、比較の立脚点を強化し、ドイツ政治の分析をよりバランスのとれたものとして展開させていく上で意味をもつのではないか、と考えるに至った。このように比較の視点を多様化させていくためには、これまでと同じく、研究所プロジェクトへの参加を通じて他の研究スタッフから受ける学問的刺激が不可欠であると思われる。
6. 今後の研究テーマ
- ドイツにおける公共政策の変容
Transformation of Public Policy in Germany
国家統をなしとげたドイツが、欧州統合とグローバル化の中でどのように公共政策を変容させていくのか。新たに誕生した緑赤連合政権の社会政策などを中心として分析する。 - ヨーロッパにおける政治的近代化の再構成
Reconstructing Political Developments in Europe
歴史学や比較政治学におけるさまざまな議論を、ヨーロッパの文脈において組み直しつつ、19世紀以降の政治発展を今日の視点から再構成する。 - 日独国家の歴史的制度比較
Comparative Study on German and Japanese State in Historical Institutional Perspective
日独がもつ共通性と個性を、国家制度や国家と社会の関係に着目しつつ歴史的に分析する。
7. 主な教育活動
- 大学院
東京大学大学院法学政治学研究科において「ヨーロッパ政治史」を担当している。
8. 所属学会
日本政治学会,日本ドイツ学会,現代史研究会,日独社会科学学会(Deutsch-japanische Gesellschaft fur Sozialwissenschaften), Deutsche Vereinigung fur Politische Wissenschaft