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自己点検・自己評価報告 各所員の研究活動
小森田秋夫
1.経歴
1946年 | 9月24日生まれ |
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1970年3月 | 東京大学法学部第3類卒業 |
1976年3月 | 東京大学大学院法学政治学研究科博士課程修了 |
1976年4月 | 立教大学法学部助手 |
1978年4月 | 北海道大学法学部助教授 |
1980年10月~81年9月 | 日本学術振興会特定国派遣研究者(ソ連,ポーランド,ハンガリー,ユーゴスラヴィア) |
1984年4月 | 北海道大学法学部同教授 |
1988年4月 | 東京大学社会科学研究所助教授 |
1993年4月 | 同 教授 |
1994年9月~95年8月 | 日本学術振興会特定国派遣研究者(ポーランド,ハンガリー) |
2. 専門分野
比較現代法大部門,社会主義法分野,専門分野:ロシア法・東欧法
3. 過去10年間の研究テーマ
- ソ連における裁判の実態と司法改革
- ペレストロイカと法治国家
- ロシア沿海地方における法秩序の形成
- ロシアとポーランドの違憲審査制とオンブズマン制度
- ロシアとポーランドの労働組合
- ロシアとポーランドの生活保障システム(社会福祉)
- 現代ポーランド議会史(1980~1997年)
- 「ソビエト社会主義法」の総体的把握の方法論
- ポスト社会主義のロシア法とポーランド法の比較
- 「社会主義と人権」についての理論的検討
4. 1998年度までの主要業績
- 「戦後日本におけるソビエト法研究(1)~(12)」『法律時報』第51巻10号~第52巻9号、1979~80年
- 「労働組合と労働者評議会――現存社会主義における労働の問題への一視角」藤田勇編『権威的秩序と国家』東京大学出版会、1987年
- 「社会主義と『政治的多元主義』――ポーランドの選択」長谷川正安他編『講座・革命と法』第2巻『フランス人権宣言と社会主義』日本評論社、1989年
- 『ソビエト裁判紀行』ナウカ、1992年
- 『<社会主義>それぞれの苦悩と模索』(近藤邦康・和田春樹と共編)、日本評論社、1992年
- 「ソ連――まぼろしの『社会主義的法治国家』」近藤邦康・和田春樹編『ペレストロイカと改革・開放――中ソ比較分析』東京大学出版会、1993年
- 「ロシア沿海地方の変貌と法秩序の形成――ひとつの見取図(上)(下)」『法律時報』第66巻7~8号、1994年
- 「検閲にたいする法的統制の試み――ポーランド検閲史の一断面」河合義和編『情報の自由と脱社会主義』多賀出版、1994年
- 「ポーランドにおけるオンブズマンの誕生(一)~(四)」『社会科学研究』第45巻3号、6号、第46巻6号、第48巻5号、1993~1997年
- 『世界の社会福祉②ロシア・ポーランド』(稲子恒夫・武井寛と共著)旬報社、1998年
5. 社会科学研究所における自己の研究分野と研究活動の位置づけ
(1)私の研究は、社会科学研究所に在職したここ10年ほどのあいだに、次のように変化してきた。
①当初からのソビエト法(ロシア法)に加え、ポーランド法に研究対象を拡げてきた。研究所内外の共同研究の場では主としてソビエト法(ロシア法)に取り組み、個別的な基礎研究としてはポーランド法に重点を置きつつ、両者の比較を意識的におこなうようになってきた。
②これらの国の法体制の特質に迫るための切り込み口として、従来は社会=経済システムに密着した領域(とくに労働)に着目してきたが、法秩序のあり方を規定する制度や文化にも目を向けるようになり、これらの両面の組み合わせとして法体制の全体像をとらえる方法を模索してきた。
③1989~1991年を転機とする体制転換に直面して、主として政治学が関心をもつ「民主化」と経済学が関心をもつ「市場経済化」との相互関係を分析する必要性を自覚し、そのために(とくに現状分析をおこなっている専門家の少ないポーランドについては)法学の枠にとらわれずに研究をおこなおうとするようになってきた。これらの変化は,ひとつには,「ソビエト社会主義法」を諸々の歴史的文脈の所産としてとらえようとする元来の関心の展開の結果、もうひとつには、研究対象そのものの大きな変動の結果であるが、社会科学研究所における研究環境からも有形無形の刺激を受けている。
(2)研究所における私の研究分野は、①比較現代法部門の一部、②中国と旧ソ連・ロシアの研究者からなる社会主義研究グループの一部、そして③比較と総合という視野をもった日本社会の社会科学的研究を志向する研究所全体の一部という三重の位置にある。
①は、かつて北海道大学の法学部に在籍していたときと基本的には共通する環境である。しかし、資本主義法にたいする歴史的視点、国際比較、法社会学的実証という社会科学研究所のこの部門全体に共通する研究姿勢は、社会主義法の研究にとって刺激的で有益なものであった。これまでは直接に共同研究の形をとる機会はなかったが、今後は、ヨーロッパ統合の法的研究という共通の課題に、社会主義時代を経験した東欧法の視点からアプローチするという独自の貢献をなすことができるのではないかと考えている。
②は、法律・政治・経済にまたがる中ソ(ロ)の研究者のまとまりが存在するという点で、他に例を見ない研究環境であった。ここでは、「中ソ比較」についての共同研究に参加することをつうじて、独自に追求してきたソ連・ロシアとポーランドとの比較にさいして、中国をも意識するようになってきたことが収穫である。これら3国のあいだには、歴史的時期と社会現象のレベルの設定の仕方によって、多様な比較の水準が成り立つと考えている。ただし、共同研究が研究所のメンバーだけで自足的に成り立つわけでないことは従来から明らかであるし、今後はますますそうなるであろう。ロシア・東欧の研究と中国をはじめとする東アジアの研究という、あまり接することのない2つの分野をもつ利点を生かし、研究所内外にまたがる研究ネットワークを意識的に築いてゆく努力が必要である。98年度から、従来の「中ソ比較研究」を「体制転換の比較研究」に切り替えて再出発したのは、そのような意図からである。
③については,研究所のプロジェクト研究へのかかわりに即して振り返ってみたい。
(3)まず、『現代日本社会』では、第3巻「国際比較〔2〕」に「『社会主義的法治国家』から『民主的法治国家』へ――一九九一年八月の<革命>と<法>」と題する論文を執筆した。これは、「会社主義」をキーワードとするこのプロジェクトの中心的問題提起をじゅうぶん消化しえていない状況のもとで、眼前で進行していた研究対象(ソ連)の劇的な変動のインパクトを受け、この変動のはらむ問題性の解明をそのままテーマにしたものであった。したがって、プロジェクト全体との有機的関連をま ったく欠いたものとなったと言わざるをえない(率直に言えば、ソ連と東アジアを扱ったこの巻自体の全体のなかでの位置づけも,じゅうぶん明確になっていたとは言い難い)。
これにたいして,『20世紀システム』では、運営委員として第5巻の編集に加わり、「脱社会主義と生活保障システムのゆくえ――ポーランドの場合」と題する論文を執筆した。執筆に当たって自らに課した課題は、一方では、自らの論文を最終的に「国家の多様性と市場」と表現されることになったこの巻のテーマのなかに位置づけると同時に、他方では、他の巻で扱われているソ連についての諸論文との関連を意識しつつ、20世紀の「対抗システム」たる社会主義の分析の一端を担う、ということであった。その結果として設定されたのが、経済システムの変化と政治システムの変化との接点に位置するものとしての「生活保障システム」という対象である。この論文でえた着想は、『世界の社会福祉②――ロシア・ポーランド』(ポーランドの部分を執筆)という著作で発展させられ、体制転換期の社会政策のディレンマをグローバル化という文脈のなかでとらえるという新たな研究テーマを導いている。このテーマは、90年代前半には民主化・市場経済化に集中していた世界の体制移行研究が90年代後半になって注意を向け始めた課題に符合するものであるとともに、『現代日本社会』では見いだしえなかった日本社会研究との接点を与えるものともなっている。
6. 今後の研究テーマ
- 現代ポーランド議会史 1980~1997年
History of the Parliament of Contemporary Poland 1980-1997 - ロシアとポーランドにおける所有・労働・社会福祉
Ownership, Labor and Social Welfare in Russia and Poland - 社会主義と人権
Socialism and Human Rights - 「ソビエト社会主義法」史
History of “Soviet Socialist Law” - ポスト社会主義のロシア法とポーランド法
Russian and Polish Law in the Post-Socialist Period - ヨーロッパ統合と東欧法
European Integration and East-European Law
7. 主な教育活動
- 大学院
東京大学大学院法学政治学研究科において「ロシア・旧ソ連法」を担当している。 - 学部
東京大学法学部において「ロシア・旧ソ連法」の講義を担当している。
東京大学教養学部ロシア・東欧科において「ロシア・東欧の社会」の講義または演習をおおむね担当している。
8. 所属学会
比較法学会(理事・企画委員),全国憲法研究会,民主主義科学者協会法律部会(理事・学術会議担当,企画委員),ロシア史研究会,ソビエト史研究会,東欧史研究会,社会体制と法」研究会,International Association of Constitutional Law