東京大学社会科学研究所

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自己点検・自己評価報告 各所員の研究活動

中川淳司

1.経歴

1955年 11月16日生まれ
1979年3月東京大学法学部卒業
1981年6月~1982年4月日本メキシコ交流計画交換留学生(メキシコ・メキシコ国立自治大学)
1988年3月東京大学大学院法学政治学研究科修了,法学博士
1990年1月東京工業大学助教授
1994年9月~95年4月米国・ハーバード大学客員研究員(FASID研究フェロー)
1995年7月東京大学社会科学研究所助教授
1998年8月~99年7月メキシコ・エルコレヒオデメヒコ客員研究員(FASID研究フェロー)
1998年9月~99年11月米国デンバー大学客員教授

2. 専門分野

比較現代法大部門,統治関係法分野,専門分野:国際法・国際経済法

3. 過去10年間の研究テーマ

  1. 国際投資の保護と規制
  2. 政府開発援助をめぐる行政・法と政治
  3. 国際貿易レジームの形成と展開
  4. 国際貿易紛争の解決
  5. 日米経済関係をめぐる法と政治
  6. 経済制度の国際的調和
  7. 先端技術と知的財産権
  8. 規制緩和・規制改革の国際的文脈
  9. 国際法の形成・実現過程における行政機関(国際機構及び国内行政機構)の役割

4. 1998年度までの主要業績

  1. 資源国有化紛争の法過程』国際書院、1990年8月
  2. ロバート・ヒュデック著『GATTと途上国』信山社、1992年4月(小森光夫他と共訳)
  3. 援助研究入門』アジア経済出版会、1996年(佐藤寛他との共著)
  4. 『国際関係法』丸善プラネット、1996年(米田富太郎他との共著)
  5. 『ソフトウェア/アルゴリズムの権利保護』朝倉書店、1996年(今野浩との共編著)
  6. 『国際法キーワード』有斐閣、1997年(奥脇直也他との共著)
  7. 『先端技術と知的財産権』日科技連出版社、1997年(佐野稔との共著)
  8. 「政府開発援助を通じた民主化支援の方策についてー日米の政策の比較を中心にー」『国際協力研究』10巻2号(1994年)67-76頁(JICA創立20周年記念論文コンテスト入選、1994年)
  9. 「貿易・投資の自由化と環境保護―北米自由貿易協定・北米環境協力協定の3年」『社会科学研究』49巻3号(1998年)1-59頁(1998年度貿易奨励会賞優秀賞)
  10. 「関税関連諸規則の国際的調和」『貿易と関税』1998年10月号、28-51頁

5. 社会科学研究所における自己の研究分野と研究活動の位置づけ

研究所における私の研究分野は国際法・国際経済法である。ここを持ち場にして、研究所のプロジェクト研究及びその他のグループ共同研究に参加してきた。以下、自己の研究分野における個別基礎研究とこれらの共同的研究の相互関連に留意して、研究所着任後約4年間の研究活動について述べることにする。

(1)研究所プロジェクト研究「20世紀システム」(1993-1998年)においては、 第1巻「20世紀システムー構想と形成」に「国際開発体制と自由貿易体制の成立」を執筆した(1998年)。第二次世界大戦後、資本主義諸国の国際経済体制の中核を形作ったブレトンウッズ・ガット体制の成立過程と、その初期の展開を分析したものである。ブレトンウッズ・ガット体制を構成する主要な国際機関(国際通貨基金、国債復興開発銀行、関税と貿易に関する一般協定)は、その後、特に1970年代初頭を画期として大きな機能変容を経験することになるが、本論文では、機能変容以前のブレトンウッズ・ガット体制に焦点を当て、それが米国を中心とする主要なプレーヤーのいかなる意図に基づいて構築され、いかなる機能を期待されていたかを分析した。

(2)グループ共同研究としては、1997年以降、「先端技術と知的財産権」、「政府開発援助をめぐる行政・政治と法」、「日米経済関係」をテーマとするグループ共同研究を主催し、学内外及び海外の参加者を加えて、活発な研究活動を実施してきた。研究の成果として、すでに共著を1冊公刊したほか(業績3-(6))、現在、「政府開発援助をめぐる行政・政治と法」に関する共著1冊、「日米経済関係」に関する英文及び日本語の共著各1冊が刊行準備中であり、いずれも1999年度中に公刊される予定である。

(3)国際法・国際経済法という研究分野での私の個別の基礎的研究は、1995年7月の研究所着任以降、経済制度の国際的調和に関する実証研究と、国際貿易紛争の解決に関する実証研究、日本の政府開発援助政策に関する研究を三つの軸として主に展開されてきた。第一の軸に属する研究として、これまでに、環境基準の国際的調和(業績4-(10))、関税関連諸規則の国際的調和(業績4-(10))、知的財産権の国際的調和(業績-4-(5)、(7))、競争法の国際的調和(「国際経済活動と国家管轄権」『山本草二先生古希記念論文集 国際法と国内法』所収、1998年)に関する実証研究を公表してきた。これらの研究に当たって、研究所の専門を異にする同僚、ことに、政治経済学、国際政治学、日本経済論、経営学を専攻する同僚との交流は非常に有益であった。この研究に基づいて、社会科学研究所が1997年度に実施した教養学部総合講義「規制緩和と社会科学」の企画立案に当たったほか、『社会科学研究』創刊50周年記念法学特集号「日本経済の国際化と企業法、経済法」の企画、Social Science Japan Journal, 第3号の特集”Deregulation”の企画を担当し、研究所内外の研究者との交流を通じてさらに知見を深めることができた。第二の軸に属する研究として、通産省主催の「ガット/WTOの紛争処理手続に関する研究会」に1991年以来参加し、ガット/WTOの紛争処理手続に く主要な紛争解決事例を検討してきた。第三の軸に属する研究として、この数年間に、日本の政府開発援助大綱とその運用に関する研究を行い、研究成果の一部を公表してきた(業績4-(3),(9))。この間、1997年度より、研究所がインドネシア大学日本研究センターとの間で行っている研究協力プロジェクトに参加し、2度にわたってジャカルタを訪問して、日本の対インドネシア 援助に関するインドネシア大学の研究者との共同研究に従事したことは、大きな刺激となった。

6. 今後の研究テーマ

  1. 経済制度の国際的調和
    Harmonization of economic regulations and institutions
    国際経済活動の規制に関わる種々の経済制度の国際的調和に関してこれまでに行ってきた実証研究を踏まえ、経済制度の国際的調和の背景、方策、国際的調和実施の管理に関する国際制度及び国内制度に関する総合的かつ理論的な考察をとりまとめることを目指す。この研究は、後述する(6)国際経済法の形成・実現過程における行政機関の役割に関する研究の重要な構成部分となる。

  2. 政府開発援助をめぐる行政・法と政治
    Administration, law and policy of ODA
    政府開発援助における政治的コンディショナリティをめぐる研究成果をとりまとめるとともに、援助国と相手国との共同行政(joint administration)として展開される政府開発援助に関する実証研究を行う。
  3. 国際貿易レジームの構造変動
    WTO(世界貿易機関)への途上国・旧社会主義国の加入が相次ぐ中で、WTOを軸とする国際貿易レジームが取り扱う問題領域が拡大し、そこでの争点も複雑・多様化している。今後のWTOにおける新たな貿易ルールの制定交渉に焦点を当てて、国際貿易レジームの構造変動を分析する。
  4. 国際経済犯罪の取り締まり
    国際経済活動の活発化、特に国際金融取引の飛躍的な増大に伴い、マネーロンダリング、麻薬取引、贈収賄、不正な証券取引など、国際経済犯罪も多様化・増大の一途をたどっている。国際経済犯罪の取り締まりのために各国の当局が行っている共助活動や国際的なルール形成の動きを分析する。
  5. 経済のグローバル化と開発戦略・市場移行戦略の見直し
    経済のグローバル化に伴い、新興工業国や旧社会主義国の開発・市場移行戦略の見直しが急務となっている。ケーススタディに基づいて、新たに形成されつつある開発・市場移行戦略と、その実施のための制度的枠組みを明らかにすることを目指す
  6. 国際経済法の形成・実現過程における行政機関(国際機構及び国内行政機構)の割国際経済法の形成・実現過程においては、行政機関(国際機構と国内行政機構)が主導的な役割を演じているにもかかわらず、これまでの研究は、紛争解決局面に専ら焦点を当てて、この面はほとんど研究してこなかった。この空白領域を埋め、国際経済法の形成過程及びその実現過程における国際機構と国内行政機構の役割を明らかにすることを目指す。

7. 主な教育活動

  1. 大学院
    東京大学大学院法学政治学研究科において「国際経済法」を担当している。

8. 所属学会

国際法学会(評議員),国際経済法学会,国際開発学会(国際協力政策分科会主査),American Society of International Law(Member, Foreign Outreach Committee), Japan Branch of the International Law Association(Member,Editorial Committee)

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