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自己点検・自己評価報告 各所員の研究活動
西垣 通
1.経歴
1948年 | 12月12日生まれ |
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1972年 4月 | 東京大学工学部応用物理学部門計数工学科卒業 |
1972年 5月 | (株)日立製作所入社 |
1980年 6月~81年 6月 | 米スタンフォード大学客員研究員 |
1982年 9月 | 東京大学より工学博士 |
1986年 4月 | 明治大学法学部助教授 |
1991年 4月 | 同 教授 |
1994年 3月~95年 3月 | 仏ランス大学客員教授 |
1996年 4月 | 東京大学社会科学研究所 日本社会研究情報センター教授 |
2. 専門分野
日本社会研究情報センター,ネットワーク型組織分野,専門分野:情報学・メディア論
3. 過去10年間の研究テーマ
- 人工知能と普遍言語
- コンピュータの思想史
- グループウェアと組織
- マルチメディア文化論
- ヴァーチャル・リアリティと社会心理
- インターネット社会論
- 多言語主義とオンライン共同体
- 多言語情報処理環境
- 情報基礎論
- メディア論
4. 1998年度までの主要業績
- 『秘術としてのAI思考』筑摩書房、1990年1月
- 『デジタル・ナルシス』岩波書店、1991年7月(サントリー学芸賞,91年)
- 『組織とグループウェア』(編著)NTT出版、1992年12月
- 『ペシミスティック・サイボーグ』青土社、1994年3月
- 『マルチメディア』岩波書店、1994年6月(テレコム社会科学賞、95年)
- 『聖なるヴァーチャル・リアリティ』岩波書店、1995年12月
- 『インターネットの5年後を読む』光文社、1996年4月
- 「インターネットで共同体は崩れるのか」世界,岩波書店、1996年5月、291-304頁
- 『思想としてのパソコン』(編著)NTT出版、1997年5月
- "A Global Electric Community : From the Fifth-Generation Computer to the Internet", in Social Science Japan Journal, Vol.1, No.2, October 1998, pp.217-232
5. 社会科学研究所における自己の研究分野と研究活動の位置づけ
研究所における私の所属は日本社会研究情報センターであり、ネットワーク型組織研究を担当している。私自身は、工学部計数工学科を卒業後14年間、日立製作所やスタンフォード大学のコンピュータ関係の研究所で、情報工学者としてソフトウェアの研究開発に従事した。その後、明治大学の法学部教養課程で10年間、情報技術と文化や社会との関わりを研究した。社会科学研究所に移籍してから3年あまりしか経過していないが、その限りにおいて社会科学研究所における研究と私の研究との関連を以下にまとめておく。
(1)現在、私が社会科学研究所で取り組んでいるのは多言語情報環境の研究だが、これは1980年代以来の私の研究と深く関わっている。1980年代、コンピュータ分野でもっとも注目を集めたのは人工知能、とくにコンピュータによる自然言語処理の研究であった。とくに、留学したスタンフォード大学はそのメッカだったといえる。日本でも第五世代コンピュータ開発が国策プロジェクトとして推進された。周知のようにこのプロジェクトは挫折したが、その理由を技術的・社会的・思想史的に分析することが私の研究テーマであった(主要業績 (1) (4) (10) 参照)。分析にもとづいて,コンピュータを「閉じた思考機械」ではなく、「開いたメディア機械」としてらえることが望ましいという結論を得るにいたった。実際、1990年代に入っ以来、マルチ メディア、インターネット、グループウェア、ヴァーチャル・リアリティなど、「メディアとしてのコンピュータ」が大きな流れになって来た(主要業績 (3) (5) (6) 参照)。そういう状況のもとで現在、インターネットを初めとする地球規模メディアの上で多様な自然言語を流通させることの重要性は広く認められつつあり、多言語情報環境の関連技術は国際的なネットワーク型組織の形成に決定的な影響を与えると考えられる。したがって、このための技術的・社会的な基礎検討が必要となる。
(2)現在、社会科学研究所のケネス・ペクター助教授、ジョナサン・ルイス東京電機大学助教授(元社会科学研究所助教授)らとともに、「言語/権力フォーラム」をWeb上で開催している。これは、多言語情報環境についての技術的・社会的問題をベースに、いわゆるグローバリゼーション時代における国家・言語・共同体などの問題を多角的に討論していく場であり、社会科学研究所の多くの研究テーマと交錯するものである(主要業績 (8) (10) 参照)。また、ここで開発された技術を、社会科学究所のメンバーが国際的な研究交流をおこなうために活用することも期待される。理系の研究と違って、人文社会科学の研究は言語に依存する部分が多く、インターネット上で英語テキストを授受するだけでは不十分である。多言語情報環境は地域研究に貢献することができるであろう。
(3)さらに深めるべきテーマとしては、コンピュータと社会・文化の関係の分析にとどまらず、いっそう根源的なレベルから広く情報やメディアをとらえていく必要がある。これは、来るべき高度情報通信社会における、人間と情報技術の関係を問いなおす研究であり(主要業績 (2) (9) 参照)、また、新たに文系と理系の知が出会う情報学やメディア論の構築につながるものと言える。これが社会科学研究所の今後の共同研究テーマの基盤の一部となる可能性もある。
6. 今後の研究テーマ
- サイバースペース多言語主義とオンライン共同体の研究
Cyberspace Multilingualism and Online Community - 一般情報学とメディア論
General Informatics and Mediology
7. 主な教育活動
- 大学院
東京大学大学院経済学研究科にて,産業経済特論「情報社会論」という演習を行っている。
8. 所属学会
日本社会情報学会(理事,研究会担当),日本計画行政学会(幹事,グローバルネットワーク専門部会担当),情報処理学会(論文査読委員,文字コード標準体系検討専門委 員),Association for Computing Machinery, IEEE Computer Society.