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自己点検・自己評価報告 各所員の研究活動

田島俊雄

1.経歴

1974年3月 一橋大学経済学部卒
1979年3月 東京大学大学院農学系研究科農業経済学専攻博士課程中退
1979年4月 農林水産省農業総合研究所研究員
1981年6月 農学博士(東京大学)
1984年4月 東京大学社会科学研究所助教授
1995年4月 同 教授

2. 専門分野

比較現代経済大部門,社会主義経済分野,専門分野:中国経済論,農業経済学

3. 過去10年間の研究テーマ

  1. 中国農業の構造と変動
  2. 中国経済の産業組織論的研究
  3. 中国経済と統計利用
  4. 中国の政府間財政関係
  5. 戦後台湾経済
  6. 東アジア農業の比較研究

4. 1998年度までの主要業績

  1. 『中国農業の構造と変動』御茶の水書房、1996年1月。1997年度日本農業経済学会学術賞を受賞(中国語版『中国農業的結構与変動』北京、経済科学出版社、1998年4月)
  2. 「中国的産業組織の形成と変容ー小型トラック産業の事例分析」(『アジア経済』第37巻第7・8号、[1996年7・8月号])[中国語版「軽型汽車産業的案件研究」(江小涓主編『中国体制転軌中的産業発展与産業組織変化ー中国若干行業的実証研究』上海;上海人民出版社・上海三聯出版社、近刊予定)]
  3. 「農業の多毛作化と農村工業」(小島麗逸編『中国の都市化と農村建設』龍渓書舎、1978年11月)
  4. 「中国鉄鋼業の展開と産業組織」(山内一男・菊池道樹編『中国経済の新局面』法政大学出版局、1990年11月)
  5. 「移行経済期の自動車販売流通システム」(『中国研究月報』第52巻第6号、1998年6 月号)
  6. 「中国・東アジアの農業構造問題」(シリーズ中国領域研究第4号『揺れ動く経済社会』文部省重点領域研究113<現代中国の構造変動>、1997年5月)[中国語版 「中国・東亜的農業結構問題」(焦必方編『日本的農業、農民和農村ー戦後日本農業的発展与問題』上海、上海財経大学出版社、1997年12月)]
  7. 「中国・台湾2つの開発体制ー共産党と国民党」(東京大学社会科学研究所編『20世紀システム』シリーズ第4巻「開発主義」、東京大学出版会、1998年5月)
  8. 「中国における中小鉄鋼企業の存立条件」(『中国研究月報』第369号[1978年11月号])
  9. 「中国の国有企業改革と政府間財政関係」(『中国研究月報』第48巻第4号[1994年4月号])
  10. 「中国の農産物生産費調査」(『一橋論叢』第87巻第5号、1982年5月)

5. 社会科学研究所における自己の研究分野と研究活動の位置づけ

研究所における私の所属は比較現代経済部門であり、研究分野は中国経済である私の場合、そもそもアジアの農業構造問題にかかわる農業経済学的研究を出発点としているが、同時に70年代末以降、すなわち計画経済から移行経済へ転換する時期以降の中国経済についても、関連分野として研究してきた。社研に異動したのは1984年であるが、それ以前は農水省農業総合研究所に勤務し、中国農業の経済学的研究に従事した。同研究所の性格から、おのずから国際的な比較研究をこころがけた。社研に移って以後、とりわけこの10年についていうならば、研究の比重は中国経済プロパーにシフトしていると考えられる。

私の中国経済に対するそもそもの興味は、70年代において中国がすでにソ連型とは異なる計画経済システムを有し、また途上国の経済発展としても独自のモデルを形成しつつあった点にある。かかる問題意識は、社研に異動し、とりわけ中ソ比較研究のグループ研究に加わり共同研究することによって、より深められたということができよう。同グループの研究成果は、近藤邦康・和田春樹編『ペレストロイカと改革・開放ー中ソ比較分析』(東京大学出版会、1993年11月)その他の形で示されているが、この場合の基本的なコンセプトは、中ソがとりわけ経済制度の面で、通説的理解に反しかなり異質なシステムを形成したという上記の議論に基本的依拠したものである。かつ各章にわたる目次の構成も中ソで共通なものとし、両者のシステム的異同を一目瞭然で示すよう試みるなど、移行経済の比較研究として先駆的かつユニークなものとなっている。こうしたシステム間比較の観点は、社研の全体研究とりわけ今回の「20世紀システム」にも当然ながら生かされているし、また他方で全体研におけるよりグローバルな視点のもとで、深められているといえよう。今回の全体研にあたり、筆者は開発主義班に所属し、中国と台湾の開発体制についての比較研究(「中国・台湾2つの開発体制ー共産党と国民党」)を担当する一方、同研究の運営委員として、末廣昭とともに第4巻「開発主義」のとりまとめを通じ、とりわけアジアの途上国にかかわる開発主義的枠組みの共有化に努めた。その成否については読者の判断に委ねざるを得ないが、開発経済学的アプローチとはやや異なる、政治学者と経済学者の合作による学際的な研究として、ユニークな成果が得られたと自負するものである。

私自身の個別研究は中国・台湾にかかわる農業経済・産業経済的研究を基本とし、社研内外のグループ研究、全体研究の刺激を受けつつ、移行経済論的もしくは比較経済分析的視点、さらには開発論的視点を導入することによって成り立っているが、とりわけ研究対象である中国経済の実態調査を重視し、中国の学者・研究者との直接的なコミュニケーションおよび競争を心がけている。中国農業の構造問題を論じ、日本農業経済学会賞を得た単著は中国語訳がなされ(『中国農業的結構与変動』北京、経済科学出版社、1998年4月)、また中国的な産業組織の形成をあとづけた論文が中国で注目されるところとなり、翻訳され中国人学者の論文と並んで研究書に収録されるような状況(「中国式産業組織的形成及其在転軌過程中的変化:軽型汽車産業的案例 研究」江小涓主編『中国体制転軌中的増長、績効与産業組織変化ー対中国若干行業的実証研究』上海;上海三聯書店・上海人民出版社、1999年5月)もある。かかる中国の学界との直接的な交流のみならず、今後の課題としてはより広く世界の中国研究者との交流を心がけたいと願っている。

6. 今後の研究テーマ

  1. 中国経済の産業組織論的研究
    Industrial Organization of Chinese Economy
  2. 中国農業の構造と変動
    Structure and Development of Chinese Agriculture
  3. 台湾における国有企業改革
    Economic Reform of the State Enterprises in Taiwan

7. 主な教育活動

  1. 大学院
    東京大学大学院経済学研究科「現代中国の経済」を担当。

8. 所属学会

日本現代中国学会(理事),アジア政経学会(評議員),日本農業経済学会

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