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社研卒業生の現在(いま)

郭舜 さん

現在、北海道大学大学院法学研究科でご活躍の郭舜さんに、社研在籍当時や最近のご様子についてお話を伺いました。

郭舜さん

ネッカーシュタイナハの4つの城のうちヒンターブルクの塔よりネッカー川を背景に(*)。

プロフィール

郭 舜(かく しゅん)

北海道大学大学院法学研究科基礎法講座(准教授)

専門分野:法哲学・国際法専攻

社研在職期間:2006年4月~2009年9月

助手(2006.04-2007.03)
助教(2007.04-2009.03)
特任研究員(2009.04-2009.09)

  2006年4月から2009年9月まで、助手(途中で助教に職名変更)、特任研究員として3年半、社研で過ごしました。初めて社研の建物に入ったのは大学院時代で、中村民雄先生(現在は早稲田大学)の演習に出るためでした。薄暗い地下の一角の部屋で、はじめは扉を開けるのも恐る恐るだったのを覚えています。もちろん、演習自体は薄暗さなどとは程遠いもので、自由な雰囲気はいわば社研の第一印象となりました。そのときには想像もしていませんでしたが、数年後幸いにも助手として採用していただけることになり、社研での生活が始まりました。

  広い個室を割り当てられたものの、書架にほとんど本もなく、がらんとした空間をもてあましているようなかたちでしたが、そうした感覚も徐々に薄れ、生活に慣れてきました。一員となってみると、社研は事務室や図書室の方々も含めて、一体となって動いている組織であるということを実感しました。自由に好きな研究をすることが許されている一方で、研究所全体に支えられていることは駆け出しの身としては非常に心強く、また実際に色々な面で助けていただきました。同時に、学問に対する姿勢のとりかた、所内・学内の動静を知ることの大切さ、図書整備の重要性、研究費の使い方といった、大学の研究者として踏まえておくべき基本的な事柄を学ぶことができました。社研で研究者生活を始めることができたのは、本当に幸運だったと思います。

  研究面では、公共性という観点から、国連の集団安全保障体制を正戦論の伝統とどのように区別して捉えることができるかという課題に取り組みました。とりあえずの答えは出すことができ、部分的には成果を公表できたものの、まとまったかたちで公刊するには至っていません。また、地域主義研究の全所的プロジェクトに加えていただき、法学・政治学だけでなく、経済学や社会学など、それまであまり馴染みのなかった社会科学の他領域の専門的な議論に触れられたこと、また多人数・多分野のプロジェクトが発展していく現場にいられたことは、貴重な経験でした。社研では現地調査をされている方が多かったこともあり、抽象的な議論ばかりではなく、適切な具体的例を元に議論することの大切さを学ぶ機会も多くありました。若手の間では岡部さんを幹事として自主的な研究会なども催され、分野も経験も異なる多彩な顔ぶれが揃って非常に刺激になりました。在籍中の大きな出来事として研究室の耐震補強工事とそれに伴う引越しがあったのですが、共同研究室に移ったのも悪いことばかりではなく、若手の方々と話す機会が増えてよい面もあったように思います。このほか、社研で苦闘し、また吸収したさまざまなことが、現在までの研究の土台になっているように折につけ感じます。

  現在の職場である北海道大学に移ってからも社研が完全に遠くなってしまったわけではなく、北大から移られた方がいらっしゃることもあって、勝手な親近感を覚えています。それは同時に、研究さえしていればよいという贅沢な時間をいただいておきながら、十分なお返しができていないということの表れなのかもしれません。いつかお返しができるように研鑽を積んでいきたいと思っております。

現在の研究室の書架はきっと書籍や資料でいっぱいになっていらっしゃることでしょう。「お返し」期待しております。今日はありがとうございました。

(2015年12月25日掲載)

最近、嬉しかったことは何ですか?
カフェ 美味しいコーヒーが飲める喫茶店を教えてもらったのですが、店で飲んだ一杯はもちろんのこと、そこで買った豆が香り高く、袋を開けてキャラメルとチョコレートがほんのり混じったような香気を嗅ぐたびに幸せを感じます。


写真: ハイデルベルクのカフェ「フローリアン シュタイナー

(*)郭先生は現在ハイデルベルクにて在外研究中です。

写真のネッカーシュタイナハ(Neckarsteinach)はドイツ連邦共和国ヘッセン州ベルクシュトラーセ郡に属す都市。バーデン=ヴュルテンベルク州のハイデルベルクから東に15kmのヘッセン州最南端、ネッカー川沿いに位置しており、4つの城郭を有するため、4つの城の町VierBurgeneckとしても知られています。

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