案内
社研卒業生の現在(いま)
高橋 五月 さん
現在、法政大学人間環境学部でご活躍の高橋五月さんに、社研在籍当時や最近のご様子についてお話を伺いました。
写真:2017年5月 ブリュッセルで開催されたメリディアン180のグローバルサミットで
プロフィール
高橋 五月(たかはし さつき)
法政大学人間環境学部 (准教授)
専門分野:文化人類学
社研在職期間:2008年9月〜2011年8月
学術専門職員
社研で初めてお世話になったのは2008年6月でした。当時、まだ米国にあるRutgers大学の博士候補生だった私を石田浩先生が客員研究員として受け入れて下さったことがきっかけでした。それから間もなくして、今度は石田先生からSSJ Forumのモデレーターを出来る人を探しているので、もしまだ日本にいる予定ならどうですかというお誘いをいただき、その年の9月から学術専門職員として勤務することになりました。以降2011年8月までの3年間、私は社研でとても貴重な時間を過ごさせていただきました。
社研での思い出は数があり過ぎてここでは書ききれないのですが、折角なので幾つかご紹介させていただければと思います。
思い出シーン1:
2009年8月。当時、学術専門職員として勤務をしながら博士論文の執筆をしていました。ある日John Campbell先生主催のPhD Groupでの発表日が10日後に迫ってもまだ準備で頭を抱えていた私を助けてくださったのが石田先生でした。赤門棟5階のオフィスで、石田先生は私のまとまらない話にじっと耳を傾けてくれました。そして、先生は「これはこういうことを言いたいのだよね?」「ここのこれはこういうことかな?」と時折質問を織り交ぜながら私の論点を図式化してくださり、ぐちゃぐちゃだった私の思考を一つ一つ整理できるように導いてくれたのでした。まるでパズルのピースを組み合わせていくように、空中で両手を左右上下に動かしながら話す先生は魔法使いのようだな、と思ったのを覚えています。その時の会話を記録した手書きメモはスキャンして、今でも大切に保存しています。
思い出シーン2:
私は赤門棟5階がとにかく好きでした。各部屋、各自でやっていることは色々でしたが、「赤門棟5階」は長屋的(?)コミュニティーを形成していたような気がします。赤門棟ランチ会なるものも不定期に開催され、いつも涙を流しながら笑っていたことを記憶しています。また当時、丁度同時期に博士論文と格闘していたのが、希望学部屋の佐藤由紀さん、人材ビジネス研究部屋の松浦民恵さん、そしてSSJJ部屋の私の3名でした。共に愚痴や悩みを打ち明け合い、最後には論文提出を我が事のように喜び合いました。先日ある打ち合わせで久しぶりに赤門棟5階を訪れたのですが、胸がキュンとしました。
思い出シーン3:
2011年3月11日午後2時46分、私は赤門棟5階のオフィスにいました。最初の大きな揺れが収まった時、自分のデスクの下から這い出て廊下に出たら、他の部屋のみんなも廊下に出ていました。白い煙が舞い、サイレンが鳴り響く中、誰かが建物の外に避難した方がいいと言い、我々はみんな階段で外に出ました。建物の外で待機している間、携帯電話上でテレビニュースを見ていた人が東北地方を津波が襲っていることを実況中継してくれていましたが、それ以上の状況は良く分かりませんでした。大きな余震が収まった後、他の人々に倣い私も赤門棟5階の部屋に戻りました。その後、玄田有史先生の研究室ならテレビでニュースが見られると聞いたのでお部屋にお邪魔すると、津波が釜石を襲っている状況が実況中継されているところでした。そして中継現場が変わり、今度は私が以前フィールド調査で住んでいた見覚えのある茨城県のある港町が映し出されたのでした。津波から1ヶ月後、私はその港町に戻り、震災の前後で何が変わり、何が変わっていないのかを探る調査を開始しました。
社研卒業後は再び渡米し、2011年9月から2016年8月まで3つの大学に在籍しました。Princeton大学東アジア学部ではPostdoctoral Research Associateとして1年間、George Mason大学社会学・人類学部ではAssistant Professorとして3年間、またMichigan大学日本研究センターではToyota Visiting Professorとして1年間お世話になりました。その後、2016年9月から法政大学人間環境学部に勤務することが決まったので帰国し、今日に至ります。
写真:2017年7月
私がゼミ生を連れて法政市ヶ谷キャンパスからほど近い釣り堀に行ったときの写真です。背後に見えるのは法政大学のビルです。「都会の自然」をフィールド調査するというお題で、鯉釣りをしながら他の釣り人にインタビューしたり、景観やお濠の生態を観察しました。
現在は、環境人類学、災害人類学、エスノグラフィーなどの授業を教えながら、東日本沿岸地域(茨城県、福島県、岩手県など)で文化人類学的研究を続けています。研究テーマは、ざっくりまとめると海と人間の関係ですが、目下の興味は「未来」です。未来を切り開くことを目標に戦後日本は沿岸開発を進めてきましたが、震災後の日本で未来はどのように想像され、創造されているのかという問いを探っています。
社研を卒業して6年経ちましたが、社研の皆様には現在も引き続きお世話になっております。今月(2017年8月)は危機対応学の地域漁業班メンバーとして釜石調査に参加させていただく予定です。いつも真剣で、刺激的で、ユーモアに溢れた社研ファミリーの皆さま、今後ともどうぞ宜しくお願い致します。
そうでしたか、東日本大震災のとき社研にいらしたんですね。海がご研究のテーマなので、あの津波には衝撃を受けられたことでしょう。地球の7割は海とか・・・、海と人間と未来をテーマにますますのご活躍を期待しております。
(2017年9月27日掲載)
- 最近、嬉しかったことは何ですか?
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先日家族で那須高原に行きました。硫黄好きとしては硫黄強めの温泉が嬉しかったです。