案内
社研卒業生の現在(いま)
中澤 渉 さん
現在、大阪大学大学院人間科学研究科でご活躍の中澤渉さんに、社研在籍当時や 最近のご様子についてお話を伺いました。
プロフィール
中澤 渉(なかざわ わたる)
大阪大学大学院人間科学研究科(准教授)
専門分野:教育社会学・社会階層論
社研在職期間:2006年4月~2008年3月
助手(2006.4-2007.3)
助教(2007.4-2008.3)
私自身の社研での正式な在職期間は、2006年4月からの2年間に過ぎませんが、間接的な社研との関わりは修士課程時代、石田浩先生の社会調査・統計の授業を受講して(1999年頃)以降、ということになります。大学院生時代は、石田先生の授業を受けたり、時々社研で行われるセミナーに参加する程度でしたが、2003年4月に「社研パネル調査」の「高卒パネル」調査が始まり、そのあたりから社研との関係が深くなりました。2005年春に、私は西日本の大学に就職していましたが、2006年度から当時の日本社会研究情報センター(現・附属社会調査・データアーカイブ研究センター)の助手ポストが1つ増えたのを機に、社研にお世話になることが決まりました。
センターの中核事業はデータアーカイブで、それまで助手は三輪哲さん(東北大・この秋から社研)1人でしたが、2006年4月から三輪さんと私の2人助手体制となりました。当時はデータアーカイブが徐々に認知されつつあり、センターとしての事業は拡大期にありました。また石田先生の科研費が通り、「社研パネル調査」の「若年・壮年パネル調査(JLPS)」がこの年から始まりました。パネル調査は現在も継続しており、社研を離れてから東洋大、そして現在の大阪大学と2つの大学を渡り歩きましたが、JLPSを通じて社研とは現在も関わりをもっています。
助手(助教)としての私の役割は、主としてデータアーカイブのwebの管理(リモート集計も含む)、寄託者との折衝、論文表彰、二次分析研究会やICPSR国内利用協議会の運営など、多岐にわたっていました。パネル調査も始まり、当時はかなり忙しく、個人研究は土日に研究室にやってきてこなしていましたが、パネル調査は自分の専門にも近かったですし、案外楽しく充実した日々だったと記憶しています。また2年めの夏には、パネル調査のプロジェクトとデータアーカイブの業務との関係で、ドイツのケルンにあるセントラル・アーカイブ(ZA、現在はGESISに統合)にインタビューに行ったり、英国エセックス大学のサマープログラムでパネルデータ分析の勉強をする機会を与えていただきました。そうした国際交流を含め、大変貴重な経験をさせていただいたと思っています。
当時も業務分担はある程度決まっていましたが、まだ組織運営はそれほどシステマティックではなく、大きなイベントがあると、皆が右往左往しつつ力技で処理するような印象がありました。ただ助手には任期があり、いずれ業務を引き継がねばなりません。仕事の量も種類も膨大になっていましたので、個人プレーに依存するわけにはいかなくなっていました。私が次の東洋大に内定してすぐに取り掛かったのは、業務マニュアルの作成です。業務内容を整理して文書化し、引き継ぐ体制を整えました。その後文書は上書きされて使われている、と聞いています。後任の人は膨大すぎて読むのにげんなりしたかもしれませんが(笑)、私がデータアーカイブに残した、ほんの僅かな貢献かもしれません。
また社研という社会科学全般にわたる広い専門領域の先生方に囲まれて研究してきたことが、私の現在の研究に影響していることは間違いありません。後任の方々の努力で、データのダウンロードやリモート集計など、アーカイブは随分利用しやすくなったと思います。欧米では当たり前となっている二次分析を、日本の社会科学に定着させる重要な基盤を担ってきたのがSSJDAだ、私自身はそれくらいの気概をもって仕事をしてきました。日本の社会科学の将来は、SSJDAのあり方如何にかかわると言っても過言ではないと思います。現在の担当者の方にもその思いを引き継いでもらいたいと思うと同時に、社研の今後の発展を願ってやみません。
「膨大な」データアーカイブの業務マニュアルをありがとうございました。おかげさまでSSJDAは今日もがんばっています。また下記コラムにもありますが、サントリー学芸賞受賞おめでとうございます。ますますのご活躍をお祈りしています。
(2015年7月6日掲載)
- 最近、嬉しかったことは何ですか?
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昨年出版した『なぜ日本の公教育費は少ないのか』(勁草書房)が、全く思いもかけずサントリー学芸賞(政治・経済部門)を受賞したことです。この本でも一部JLPSのデータを利用しています。
また今年になって長男が誕生し、育児を楽しみつつ充実した日々を送っています。
写真左:
東京会館での
サントリー学芸賞贈呈式
(2014年12月9日)
写真右:
受賞著書